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2010-03-28

英語上達の秘訣は発音練習にある

Lilac さんの英語教育に関する問題提起が論議を呼んでいる。

日本の中高の英語教育がマイナスにしかならない件について - My Life in MIT Sloan

どちらが原因か結果かわからないが、日本が内向きであることと日本人の英語力の乏しさは強い相関関係があるに違いない。内向きな人たちであっても、英語が上達すれば、外の情報が自然に耳に入ってくるから、だいぶ考え方が変わるかもしれない。

今日は、英語の発音を上達させる方法について話したい。

私は英語をきれいに発音することは非常に重要だと思っている。なぜなら、発音が上手くならないと、相手が何を言っているのか聞き取れないからだ。ヒトは言語音を耳にすると、自分で発音するとどうなるか脳内で仮想的に口の器官を動かし、そのシュミレーション結果を使って、その言語音を認識するらしい(認知と行動の密接な関係については、このエントリが参考になる)。

理屈はともかく、私自身は、発音をきれいにすることで、急に言語音がクリアに聞こえるようになった経験をしている。同様の経験をしている人は多いだろう。リスニングが上達すると、英語での会話が楽になるだけでなく、語彙を増やすのにも有利である。なぜなら、1つの単語を覚えるとき、綴りという視覚的情報だけでなく、音声としても定着するので、記憶に残りやすくなるからだ。

発音の練習は、勉強というより、スポーツの基礎訓練にちかい。別に頭のよしあしは関係ないのだ。ただ、正しい習慣を身に着けるまで愚直にやらないければならないのがつらいだけだ。やる気があれば誰にでもできることだろう。

UDA式30音

まずは、いまや古典ともいえる UDA式30音。

ウェブサイト英語発音UDA式30音でマスターする英会話

日本人が間違えやすい30の英語の発音を徹底的に鍛えることで、ネイティブスピーカーに通じる英語を目指す。UDA式30音をマスターしても、ネイティブスピーカーの発音に比べれば、正確さは 80% くらいかもしれない。日本語訛りは残る。それでもネイティブスピーカーにとってはほぼ違和感のない発音になる。日本人としてはその程度で十分だろう。

日本人は特にあごを大きく下げて作る明るい母音(all, top 等) がぜんぜんダメなのだ、という指摘は新鮮だった。

完全版 英語リスニング科学的上達法

これは直接、発音矯正をするものではないが、発音に対して敏感になるには最適な英語リスニング教材。ATR人間情報通信研究所というまじめなところが作っている。紛らわしい音のペアを提示して、他にヒントを出さずにどちらなのか答えさせる。たとえば、悪名高い L/R の音のペアである。これをはじめてやると、自分の耳の悪さに相当へこむのは請け合い。それでもトレーニングを積むと徐々に聞き取れるようになっていく。

昔はリスニング教材しかなかったが今は、「英語スピ-キング科学的上達法 」なんていうのもあるらしい。私はやったことがないから保証できないけど、試してみてもいいかも。

ハミングバード発音矯正メソッド

ハミングバードと呼ばれる発音矯正メソッド。それを実践する学校が全国にちらほらある。私は、東京・代々木にある「ハミング発音スクール」に通ったことがある。これは生半可な英語学校ではない。なにせ発音矯正専門の学校である。ここの先生たちは、みな日本人でもともと英語には苦労した方が多いらしいが、ネイティブスピーカー並に発音がうまい。あれは本当に驚きだった。英語は、そもそも日本語とぜんぜん発声方法が違うことを教えてくれる。唯一残念なのは、授業料がかなり高いこと。それでも、たとえばこれから留学や海外赴任を予定していて、本気で英語と向き合わなければならない人たちは、試してみる価値が十分あると思う。

まとめ

すでに成人してしまった日本人がネイティブスピーカー並の発音を身につけるのは、不可能でないにしろ、非常に難しい。それでも、「英語の発音のツボ」をきちんと押さえるだけで、ネイティブスピーカーにとってはたいへん聞き取りやすくなる。とりあえず日本人の大人たちはこのレベルを目指そう。

10 歳以下の子供たちは、比較的容易にきれいな英語の発音を身につけさせることができるかもしれない。この子供たちが最初に接する英語教師はネイティブスピーカーでなければならない。もし、本気で日本人の英語力を底上げしたいと願うなら、20 校に 1 校、英語で教える「英語小学校」を作る ことを提案したい。ここではまずは、外国人のネイティブスピーカーが全教科を英語で教える。そしてそこで育った子供たちが、今度は教師となり、外国人に代わって子供たちに英語で教科を教えるようになるのだ。

自分の英語はダメだとあきらめるのは早い。頭のよしあしは関係ないから、訓練をつめば、だれでも発音はきれいになる。そうすると自分の英語に自信がつき、勉強が楽しくなる。こうやって英語力がどんどん向上していく。日本人の英語はもっとうまくなる

LilacLilac 2010/03/28 17:03 Elm200さん
早速記事を取り上げてくださって有難うございます。

>私は英語をきれいに発音することは非常に重要だと思っている。なぜなら、発音が上手くならないと、相手が何を言っているのか聞き取れないからだ

これはおっしゃるとおりですね。
いま私のところのコメント欄で、発音を良くする必要があるかの是非について議論されてますが、
こういう見方もありますね。

日本人の間違えやすい発音をまとめた本はあるだろうと思ってましたが、知らなかったので参考になりました。

yasu_boyyasu_boy 2010/03/28 19:14 こんばんわ
>発音が上手くならないと、相手が何を言っているのか聞き取れない
まったくそのとおりだと思います。

>そこで育った子供たちが、今度は教師となり、外国人に代わって子供たちに英語で教科を教えるようになる

いいと思いますがそれは、時間がかかりますね。小学一年生が、大学を出るまで、16年かかりますからその生徒が先生として教えだすまで16年かかります。それにその生徒が教職につくかどうかも分からないという現実もありますし。

それよりも、中学生や高校生でもきちっとした発音は身につきますし、そこから始めるのが一番の方法だと思ってます。つまり、教師に英語で授業をさせるということです。その辺の話は。こちらの記事に書いています。
英語で授業できない英語教師を追い出せ
http://1kyuu.seesaa.net/article/111570968.html

石水石水 2010/03/28 21:59 >本気で日本人の英語力を底上げしたいと願うなら、20 校に 1 校、英語で教える「英語小学校」を作る ことを提案したい。

昨年9月に国際学校の中学へ息子を進学させた経験で言うと、「英語小学校」で1年の1学期から英語で授業をする為には、幼稚園の手前のレセプションクラスから子供たちを英語に親しませる必要があります。

また、英語小学校には、クラスに何人か(できれば半分くらい)本物の英語会話ができる小学生が必要です。でないと、先生のいないところではみんな日本語の会話になっていまうでしょう。子供が本当に英語会話を習得するのは授業ではなく、友達との会話からです。ちなみに授業で必要な英語力は会話ではなく読み書きになります。

石水石水 2010/03/28 22:09 >16年かかりますからその生徒が先生として教えだすまで16年かかります。

手っ取り早く安価に英語教師を探すなら、いますぐフィリピン人教師を招聘すればよいと思います。フィリピンでもトップクラスの大学卒なら優秀だし、アジアでは一番まともなアメリカ英語を話すし、給料も日本の教員並みで良い。

taka21sttaka21st 2010/03/29 02:40 公務員の国籍条項(日本国籍保有者しか公務員になれない)があるので、外国人のネイティブスピーカーは公立学校の先生になる事は出来ません。現在は補助教員または常勤講師(課長以上になれない)という限定的な身分で勤務しています。英語教師だけでも国籍条項を適用を外すような措置をしなければ、良質な英語教師は日本に定着しません。

Andy MAndy M 2010/03/29 10:04 こんにちは。
>すでに成人してしまった日本人がネイティブスピーカー並の発音を身につけるのは、不可能でないにしろ、非常に難しい。それでも、「英語の発音のツボ」をきちんと押さえるだけで、ネイティブスピーカーにとってはたいへん聞き取りやすくなる。とりあえず日本人の大人たちはこのレベルを目指そう。
まさにおっしゃる通りです。
私の場合は、アメリカに来た当初からSpeech Therapistに通い、1、2年位で、アメリカ人の上司、友人から、「随分英語が上手くなったな。どうやってそんなに上達したんだ?」と言われるようになりました。上司に「実はSpeech Therapistに通って発音を矯正している。」と言うと、彼は「すごい!今まで外国生まれの奴に、発音が分かりにくいと言った事はあるが、本当にSpeech Therapistに通って流暢に喋れるようになったのは、お前が初めてだ!大抵の奴は、けなされたと思って気を悪くするだけなのに。」と驚いていました。
現在アメリカに来たばかりの日本の方にお勧めなのは、Speech Therapistに通って発音を矯正する事と(日本人の発音がどれ程分かり難いのか実感できます)、できる限り日本語を使わない事です。
それから、ハミング発音スクールと言うところでは、non native speakerである日本人が、英語の発音矯正をやっているそうですが、私はこのアプローチに賛成できません。私も、Speech Therapistに通って、過去20年位は仕事でもプライベートでも英語漬けでやってきましたが、発音を矯正したいと言う人には、必ずnative speakerの専門家をお勧めします。
個人的には、日本の英語教育の問題点は、何のために英語を学ぶのかと言う目的が曖昧で、目的を達成するための効果的な学習法が定まらないという点であると考えます。
例えば、英語によるcommunicationを目的とするならば、10歳未満から徹底して英語の正確な発音を教え、高校位からは、アメリカなどに留学した方が良いでしょう。その一方、英語は読めて書ければ良いのであれば、中学から文法、読解(但し和訳は不要で、英語での設問に英語で答えられる様にする)を中心に教えれば十分であると思います。
いずれの場合も、効果の無い事や、自分が根本的に嫌いなことをひたすら続けることに意味がある、みたいな古臭い教育方針とは決別する必要があるでしょう。
>もし、本気で日本人の英語力を底上げしたいと願うなら、20 校に 1 校、英語で教える「英語小学校」を作る ことを提案したい。ここではまずは、外国人のネイティブスピーカーが全教科を英語で教える。そしてそこで育った子供たちが、今度は教師となり、外国人に代わって子供たちに英語で教科を教えるようになるのだ。
賛成です。本来、communication用の英語教育は一部の希望者のみが選択する選択科目で良いと思います。英語小学校に親が過度な期待を持たないように、希望者には授業を公開するのも良いでしょう。英語を一度も習った事のない子供に英語のみで授業をするには、最初の1、2年位は、native speakerの教師が移民の子に教えるがごとく、かなりの初歩レベルから始めなければならないでしょうから。校内では、原則的に日本禁止にすべきです。学校のみで英語を喋ってるだけで、日本語が喋れなくなる日本在住の日本人の子供などいないでしょうし。
港区あたりを英語特区にし、英語を公用語(勿論、学校の授業も英語)という案もありますが。

シロガネシロガネ 2010/03/29 12:54 >まともなアメリカ英語
世界の英語教育はアメリカ英語よりイギリス英語の方が主流だそうです。
英語の本場は当然イギリスですし、日本でもイギリス英語を教えてほしいと思っています。
私も両親から「英語はイギリス英語を勉強しろ」と言われてきました。
アメリカ一極集中は崩れ始め、しかしまだ英語が世界標準語ならば、
イギリス英語に移行してもいいじゃないか、(むしろ)しろと思います。
そもそも世界標準語になったのって、アメリカの国力ではなく大英帝国があっちこっちに進出した結果ですよね?

イギリス英語は教材が少ないのが悩みです。
探せばありますが、アメリカ英語の方が圧倒的ですしね…

シロガネシロガネ 2010/03/29 12:54 >まともなアメリカ英語
世界の英語教育はアメリカ英語よりイギリス英語の方が主流だそうです。
英語の本場は当然イギリスですし、日本でもイギリス英語を教えてほしいと思っています。
私も両親から「英語はイギリス英語を勉強しろ」と言われてきました。
アメリカ一極集中は崩れ始め、しかしまだ英語が世界標準語ならば、
イギリス英語に移行してもいいじゃないか、(むしろ)しろと思います。
そもそも世界標準語になったのって、アメリカの国力ではなく大英帝国があっちこっちに進出した結果ですよね?

イギリス英語は教材が少ないのが悩みです。
探せばありますが、アメリカ英語の方が圧倒的ですしね…

shiroshiro 2010/03/29 13:22 ああ、これはvalidなポイントですね。

音声言語の理解に発音機構がからんでいるという説はかなり昔からありました。20年前くらいに音声認識/合成の研究室にいた時にも目にしたので。その後この分野を追っかけてなかったので疎くなっていたのですが、この記事をきっかけに調べてみたところ、ミラーニューロンの発見もあって間接的な証拠は積み重なっているようですね。肯定的なレビューはこちらのサーベイがよくまとまっていました (Galantucci et al. 2006) http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2746041/

ただし、「音声言語の理解に運動機構が*必要*か?」という非常に狭い意味では、「言語運動野へのダメージが言語認知には一般に影響を与えない」といった反例があるので、「発音が上手くないと、相手が何を言っているか聞き取れない」という言明は強すぎると思います (Hickok, 2009)
http://pissaro.soc.huji.ac.il/Shlomo/links/courses/Motor_contributions_2009/Bibliography/Hickok%202009.pdf

ですが、おそらく対象言語の弁別を認知だけでなく発語でも訓練することがリスニング精度を上げるのに寄与することはほぼ間違いないと思うので(少なくとも、これとこれは違う音、という意識ができるようになる)、その観点から発音を重視する、というのは良いポイントだと思います。ただし、ここで問題になっているのは*弁別*であって「*綺麗な*発音」と言ってしまうと議論がずれちゃうかもしれません。

elm200elm200 2010/03/29 16:00 >公務員の国籍条項(日本国籍保有者しか公務員になれない)があるので、外国人のネイティブスピーカーは公立学校の先生になる事は出来ません。現在は補助教員または常勤講師(課長以上になれない)という限定的な身分で勤務しています。英語教師だけでも国籍条項を適用を外すような措置をしなければ、良質な英語教師は日本に定着しません。

ありがとうございます。そういう規定は知りませんでした。ちょっと話はずれますが、国立大学の外国人教授とかはどうなんでしょうか?あれは、いまは独立行政法人だから、公務員にはあたらないのかしら?

>ただし、「音声言語の理解に運動機構が*必要*か?」という非常に狭い意味では、「言語運動野へのダメージが言語認知には一般に影響を与えない」といった反例がある

そうなんですか・・・。ひょっとしたら、いちど聞き取りの回路ができてしまったら、言語運動野の関与が少なくなる、ということも考えれますね。いずれにしろ、ある言語音を頭の中で確立するときには、言語運動野の果たす役割は大きいように思います。

上では、はしょって書かなかったのですが、言語音の理解には2段階があると思います。

1.音素を正確に弁別する段階
2.文脈を利用して音素の連なりから単語を推定する段階

発音が悪いと聞き取りがしにくいというのは上の 1 にかかわっていると思います。ただし 1 の音素の弁別が不正確でも、語彙が豊富で文脈に対する理解があれば、2の段階で正しく単語を推定できます。しかし、余計な計算が必要なので、処理速度は落ちるでしょうね。

たとえば、日本人は、cup / cap / cop のいずれの音を聞いても、頭の中では「カップ」というカタカナ音が響いているのです。このいずれが正しいのか弁別するのは、文脈の力を借りなければなりません。そこで余計に頭を使うので疲れるし相手の話すスピードにもついていけなくなるわけです。

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