一昨年頃から自宅や外出先で音楽を聴くスタイルが少しずつ変わり始め、DSを導入してからはその変化が決定的になった。以前はCDがソースの大半を占めていたのだが、いまは時間で換算するとかつての半分程度に減少。その代わりにダウンロードした音源やリッピングしたデータをDSで聴く時間が長くなり、さらにインターネットやパソコンの音源を再生する時間が急速に増えている。
パソコンが必須の音源を再生するときはUSBをS/PDIFに変換するDDコンバーターを使うことが多かったのだが、最近、第203回で紹介したフェーズテックデジタルの「HD-7A」(
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インターネットやパソコンの音源を再生する機会が増えていると書いたが、その中身はいろいろある。ベルリンフィルの「デジタルコンサートホール」、ナクソス・ミュージック・ライブラリなどの有料ストリーミングに加え、最近はインターネットラジオでも注目プログラムが目白押しで、そこでなければ聴けない貴重なコンテンツも少なくない。
パソコンの音源はUSB-DACなどの試聴用として内蔵SSDやNASに保存しているものが多い。大半はロスレスまたは非圧縮ファイルで保存しているが、iTunesで購入した音源はもちろんAACフォーマットだ。
こうして書き出してみると、パソコン関連の音源には方式やレートが異なるものが何種類も混在していることがわかる。クオリティにこだわるなら当然ロスレスまたは非圧縮に絞りたいところだが、「デジタルコンサートホール」のようにそのプラットフォームでしか聴けないコンテンツの場合は、たとえ圧縮データであっても、聴き逃すわけにはいかないのだ。
そんなとき、今回私が導入したHD-7Aが威力を発揮する。非同期伝送を実現するUSB-DACとしての機能に加え、K2テクノロジーを用いたビット拡張とアップサンプリングによって音質改善を図ることができるのだが、この機能の効果が想像していたよりもずっと大きいのだ。
「デジタルコンサートホール」の音声フォーマットはAACの320kbpsを採用しており、ストリーミングサービスとしてはかなり水準が高い。だが、K2テクノロジーをオンにしたHD-7Aで聴き直すと、同じ音源とは思えないほど鮮度の高い音に生まれ変わる。特に、内声でリズムを刻む弦楽器の細かい音の粒立ち、ホルンや木管楽器のハーモニーなど、主役ではないが重要なパートの存在が鮮明に浮かび上がり、オーケストラの響きが一気に充実する。粒立ちは良くなるが、音調に硬さはなく、かえって柔らかさを増すほどだ。
USB-DACをHD-7Aに変更した後、MacBook AirでiTunesと組み合わせて使っているAmarra Miniの音の良さが、以前よりも格段に聴き取りやすくなっていることにも気付いた。AmarraはMac上で動作する高音質音楽再生ソフト「Amarra」の姉妹バージョンで、最大で96kHz/24bitまで対応し、WAVだけでなくアップルロスレスのデコードもサポートしている。有料のソフトだが、クオリティを考えると導入する価値は十分にある。
このソフトの音の良さはCESで確認済みだったのだが、パソコンにHD-7Aをつなぎ、iTunesや他の再生ソフトと切り替えて聴き比べてみると、やはりその差は思っていた以上に大きいことがわかる。Amarra MINIのコントロールボタンでオン/オフを切り替えれば、iTunesとの音の差を瞬時に聴き取ることができるのでとてもわかりやすい。最大の違いは情報量と空間の大きさだが、ボーカルやピアノの質感にも明らかな変化が現れている。
ロスレス音源はAmarra MINIとHD-7Aの組み合わせで聴き、インターネットラジオやデジタルコンサートホールなどの圧縮音源はHD-7Aが内蔵するK2テクノロジーの支援を利用する。いまのところ、我が家でパソコンの音源を聴くときはこの組み合わせが最良の選択肢だ。