死亡した男性が入山に使ったとみられる林道。複数のスノーモービルが走行した跡がある=山ノ内町夜間瀬 |
下高井郡木島平村往郷の剣沢ダム近くの水路に、スノーモービルを運転中の男性が転落したとみられる死亡事故で、ダムを管理する同郡山ノ内町が水路を含むダム周辺半径約300メートルを立ち入り禁止にしていることが28日、分かった。危険防止目的で告知看板を複数立てているが、冬期は豪雪で埋まってしまい、入山者からは見えない。一方、一帯の国有林を所管する北信森林管理署は「入山を規制する法的根拠がない」としており、立ち入り禁止を知らない愛好者も多いのが実情のようだ。
雪が締まる3〜4月は、一帯の高原でスノーモービルを乗り回す人が少なくない。今回の事故を受け、愛好者らの間では「自己責任」が指摘されており、町農林課の担当者は、雪原の安全をめぐり「どう対応すればいいのか」と困惑している。
事故は20日に発生。飯山署などによると、埼玉県の会社役員男性(62)がダム湖から延びる深さ約6メートル、幅約3・5メートルの水路に倒れているのが見つかり、そばには乗っていたとみられるスノーモービルがあった。男性は運転歴約30年のベテラン。同町夜間瀬の林道に車を止め、1人で入山したとみられるという。
走行用ベルトを回転させて進むスノーモービルは、一般道を走る場合は自動二輪免許が必要だが、雪山やスキー場のゲレンデを走る分には免許は要らない。木島平村のカヤの平高原や飯山市のなべくら高原では30年ほど前からレジャー目的で入山する人がおり、近年は遠方からの愛好者も目立つ。剣沢ダムも山ノ内町からカヤの平方面へのツーリングコース上にある。
愛好者らによると、ツーリングコースには雪が張り出した雪庇(せっぴ)ができていたり、雪面の下が空洞になっていたりする場所がある。今回の事故で初動捜査に当たった中野署は「雪原が続いていて水路があることに気付かなかったのではないか」と指摘する。
一方、剣沢ダム周辺について、村内の愛好者(57)は「夏場にダムにつながる道路のゲートに鍵がかかっているのは知っているが、冬期に一帯に入ってはいけないという認識はなかった」と話す。山ノ内町農林課の担当者は「冬期にずっと見張るわけにもいかない」とする。
ただ今回の事故では、飯山署などの調べで、男性が1人で山に入ったとみられており、行政の管理責任よりも、自己責任の観点から単独入山を疑問視する声が上がる。スノーモービルは車体重量が最低200キロ以上あり、山中で木にぶつかるなどして故障するといった予期せぬ事故への対応も考慮すると、「万が一の時は乗せてもらえるよう、複数で山に入るのが常識」(別の愛好者)のためだ。
入山を規制する根拠がないとする北信森林管理署は、自然環境や生態系への影響といった面から「スノーモービルで入山したいという相談があればご遠慮願うつもり」とする。村内の愛好者は「事故がきっかけで注目を集め、その結果、規制が強くなって入山できなくなるのだけは避けたい」と“本音”を漏らした。