思い出や感謝の言葉を記してシャッターに張られたメモ=17日、東京都豊島区南池袋1丁目
店舗閉鎖で下りたままのシャッター。閉店を惜しむ客らが残した張り紙を見る人たち=17日、東京都豊島区南池袋1丁目
シャッター前に置かれていた「ありがとうメッセ」用の紙とペン、ガムテープ=17日、東京都豊島区南池袋1丁目
東京都豊島区の池袋駅東口でおよそ60年にわたって営業してきた布地や手芸用品の店「キンカ堂」が自己破産を申請して閉店して約1カ月。下ろされたシャッターには直後から閉店を惜しむメモが張られ始め、今も増え続けている。思い出と感謝の言葉をつづったメモは現在、300枚近く。大人の背の高さを超えてびっしりと並んでいる。
「春休みに幼稚園の袋や室内小物をつくろうと思ってきたら閉店でびっくりです。生地が豊富で、しかも安かったのでザンネンです」
キンカ堂は1951年に設立され、池袋の本店のほか、1都6県に19店舗を持ち、首都圏では「ユザワヤ」と並ぶ大手の手芸用品店だった。
民間信用調査機関の東京商工リサーチなどによると、ピークの91年2月期に800億円以上あった売り上げは、郊外店の台頭などで09年2月期には150億円を割り込むまで減少。バブル期の無理な店舗拡大が響いて資金繰りが悪化、今年2月22日、東京地裁に破産申請した。
メモの声を拾ってみると――
「私の青春時代はデパートの洋服は高価で、すべて自分で作りました。貴社の製品は安く大助かりでした。残念ですが、これも時代の流れでしょうか。(70歳)」
かつて洋服は買うより自分で縫うものだった。母と娘で通った人も多い。
「いきなりなくなってさみしいです。母も私もお世話になっていて、夏休みの自由研究にも使わせていただきました。(12歳S・K)」
お気に入りの一着を大事にしたい。そんな思いにもこたえてくれた。
「ファスナーがこわれてコートをセールで買ってしまおうかと思っていましたが、とても親切にファスナーを選んで下さいました。修理して今日も着てまいりました」