【北京=多部田俊輔】中国民営自動車大手、浙江吉利控股集団によるスウェーデンの高級車ブランド「ボルボ」買収は、規模の拡大に加えて、品質やブランド力向上を重視し始めた中国自動車産業の姿勢を象徴する。世界最大市場に成長した国内にとどまらず、積極的なM&A(合併・買収)を通じて海外市場でも存在感を高めるための戦略だ。
吉利は2009年から海外での買収攻勢を開始。対象は完成車メーカーに加え、変速機など基幹部品メーカーにも及ぶ。「一般大衆が買える車」を売り物にしてきた同社は低価格車メーカーの印象が強い。28日の記者会見で李書福董事長はボルボの魅力として品質や安全・環境性能、デザイン力に何度も言及した。海外企業からの技術取得で品質を高め、まずは国内でのシェア拡大を狙う。28日の記者会見で李書福董事長は「ボルボは世界最高のブランド力を備え、中国でも非常に潜在力がある」と述べた。
さらに海外での拡販も進める。従来は東南アジアや中近東など途上国向けの輸出や現地での組み立て生産が大半だったが、ボルボ買収で念願だった欧米など先進国市場への本格進出を果たす。吉利によればボルボのスウェーデンとベルギーの工場や労働組合、販売網はそのまま維持する。吉利は3月中旬に「ロンドンタクシー」の製造会社買収に合意したばかり。相次ぐ買収で知名度向上効果にも期待している。
技術力など経営資源を海外に求めるのは吉利だけではない。国有大手、北京汽車工業控股は米ゼネラル・モーターズ(GM)傘下の「サーブ」(スウェーデン)から一部資産を買収。米著名投資家バフェット氏が大株主の新興メーカー、比亜迪(BYD、広東省)も日本の金型メーカー、オギハラの工場を買収する計画だ。
金融危機後の海外自動車関連企業の業績悪化が、中国勢にとっては買収の追い風になった。中国政府も国内勢の競争力強化を後押し。国内生産と輸出の両面で成長のエンジンに育てようとしている。28日のボルボ買収調印式には中国の李毅中・工業情報化相も出席した。民営の吉利も政府との関係強化が進みそうだ。
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