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「ギョーザ事件解決」カード、鳩山訪中実現へ一手

 日中関係の最大懸案の一つだった中国製冷凍ギョーザ中毒事件。

 発覚から2年以上が経過し、捜査が暗礁に乗り上げていたなか、中国当局は容疑者逮捕を電撃的に発表し、事態が一気に動き出した。この時期に中国が行動を起こした背景には、鳩山首相に早期の訪中を求めたい胡錦濤政権の対日配慮がうかがえる。

 この事件をめぐっては、昨年、中国側が捜査の中間報告を公表して日本国民の対中感情の改善を図ろうとした。だが、中国国内に毒物混入を公式に認めることへの抵抗が強く、見送られた。最近は、日本側が、製造元「天洋食品」の工場移転の話が浮上していることについて確認を求めても、中国外務省から回答がない日々が続いた。

 捜査打ち切りが取りざたされた今のタイミングでの発表について、関係筋は「国家の威信をかける上海万博の開幕に合わせて鳩山首相を訪中させたいという胡政権の強い意思が働いた」と言い切る。

 日本側には、もともと6月の上海万博ジャパンデーに訪中したいとの意向があったが、中国側は「ジャパンデーは日本のため。各国首脳が集まる4月30日の開幕レセプション出席こそが中国の利益にかなう」(中国筋)と考えている。昨年来、鳩山政権、小沢民主党との関係を重視する姿勢を打ち出してきた胡政権には、「ギョーザ事件解決」というカードをきることで、鳩山首相訪中だけでなく、5月にも見込まれる温家宝・中国首相の日本公式訪問に向けても良好な環境をつくり出す狙いがある。

 胡政権はこれまで、小沢民主党幹事長の資金管理団体による土地取引に絡む事件の推移を見守り、カードをきる時期を慎重に見極めようとしていたとの見方も強い。国内で、ギョーザ事件をほとんど報じさせず、2年以上たって記憶が十分に風化した今なら、インターネットでの政府批判や反日ムードも広がらないとの読みもあったとみられる。

 中国側は、毒ギョーザ事件が日本国民の対中感情に深刻な悪影響を与え、中国製食品への不信感を増幅させたことを十分理解している。容疑者逮捕により、事件を「人為的な毒物混入」と断定、一般的な「食の安全」の問題と切り離し、幕引きを図ることで、中国製食品の対日輸出回復、国際イメージの改善につなげようとの思惑もある。

 ただ、中国側は、事件について、「なおも作業(捜査)中」(新華社)としており、今後、犯行の手口や物証などで日本側が満足できるような情報が明らかにされるかどうかは不透明だ。(北京 佐伯聡士)

2010年3月28日11時44分  読売新聞)
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