大阪市は26日、生活保護受給者らの宿泊施設を運営する同市平野区の社団法人に、同施設で新たな生活保護受給者の受け入れを認めないと通告したと発表した。入居者34人が劣悪な環境で生活していることが立ち入り調査で判明。生活保護費を受給者から吸い上げる「貧困ビジネス」とみて、入居者に転居を促す。
通告は25日付。生活保護をめぐる宿泊施設を対象にした行政指導は市では初めてで、全国的にも珍しいという。
市によると、施設は同市浪速区日本橋5丁目の8階建てビル。2〜8階に高さ1.8メートルの板で間仕切りした7.5平方メートルの個室が48室あるが、上が空いて音は筒抜け。トイレは3階と8階に計2カ所、共同風呂は1カ所だけ。
社団法人は、月額1人約12万円の生活保護費のうち、家賃として生活保護法が定める住宅扶助の上限額(市の単身世帯の場合)4万2千円と光熱水費1万円を徴収。4月以降、夕食代2万5500円も徴収する予定だった。
社団法人は昨年10月設立。生活困窮者らに無料や低料金で宿泊施設を提供するとして12月に市に届け出たが、市は書類不備で受理しなかった。同施設は今年2月に無届け状態で運営を開始。入居者34人は野宿生活などをしていた20〜60代の男性で、社団法人側に声をかけられて区役所に生活保護を申請したという。
市幹部は「市に届け出が不要な宿泊施設も含めて、貧困ビジネスの実態解明を進めたい」と話している。一方、社団法人の代表理事の男性(33)は「市の対応に困惑している。入居者からは苦情もない。改善が必要な点を具体的に示してほしい」と話した。(島脇健史)