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「地域密着」を掲げ、ボクシングジム動き出す/川崎

2010年3月28日

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地域密着の理念を語る新田会長=川崎市多摩区の川崎新田ボクシングジム

地域密着の理念を語る新田会長=川崎市多摩区の川崎新田ボクシングジム

 人気が低迷するボクシングに再び光が当たるよう、「地域密着」を掲げて動きだしたジムが川崎にある。殴ることを職業とするボクサーたち。闘争心の内に秘める勇気、優しさといった「力」を地域に役立て、やがて「わが街のボクサー」として応援してもらおうという試みだ。

 冷たい雨が落ちる夕暮れ。夢追う若者が一人、また一人と扉をたたく。川崎市多摩区の「川崎新田ボクシングジム」。雑居ビル1階、サンドバッグの音があふれる20畳ほどのフロアは、選手が吐く息と汗でむせ返っていた。

 壁に張り出された「今月の目標」には「相手と自分に勝つ」。傍らでジムの新田渉世(しょうせい)会長(42)がほほ笑んでいる。「突き詰めれば、ボクシングこそは、人類を救うスポーツではないかと思うんです」

 横浜国大出身、元東洋太平洋チャンピオン。ジムの名に「川崎」の2文字を新たに加えたのは、開設7年を迎えたこの春のことだ。

 きっかけは昨秋に観戦したJリーグ・川崎フロンターレの試合だった。等々力陸上競技場を埋めたサポーターが連呼していた。「カワサキ、カワサキ」。その数1万6千人。「東京と横浜に挟まれ、帰属意識が薄いといわれる川崎だが、地元愛を喚起される人がこんなにいるとは」

 街に夢を与える選手たち、支える市民の高揚感―。同じことがボクシングでもできないものか。このうちの1割でも足を運んでくれれば、後楽園ホールはいっぱいになる。それにはまず地域に認めてもらうことだ。では、何ができるだろう。

 一つの信念があった。

 「ボクシングには人を変える力がある」

 恐怖と向き合う勇気、減量を乗り越える克己。ボクサーは痛みを感じ、人の痛みを知る。本当の強さとは、優しさなのだと知る。

 夢を持つことさえ難しい時代。葛藤(かっとう)から身をかわし、閉塞(へいそく)感は他者への攻撃に容易に結び付く。「ひたむきさや相手を敬う心。こんな時代だからこそ、響くものがボクシングにはあるはずだ」。人が変われば、地域も変わる。選手を街へ連れて出ようと、決めた。

 学校に出向き、夢追う日々を語る。夏祭りでミット打ちのショーを披露し、体験教室を開く。地元の体育館で横浜のジムとの対抗戦を組む。「地域」をキーワードにアイデアは膨らむ。

 「カネはないけど、誇りはある。人生を懸けるボクサーの姿を一人でも多くに知ってほしい」。熱いファイトが身上の岳(がく)たかはし選手もまた、心優しき青年の一人だ。

 川崎育ちの22歳、現在ミドル級日本ランク2位。日中は近所の焼き肉店で時給950円のアルバイト、夜はジムで己の弱さと向き合う。「試合後は『ありがとう』という言葉が出てくる。拳二つで向き合ううち、相手も困難を乗り越え、このリングに立っているのだと思えてくる」

 試合には小中学校時代の同級生が応援に駆け付ける。「お前は夢中になれるものがあってうらやましい」。安くないチケットを買ってくれる地元の声援は大きな力だ。

 新田会長も夢見る。「このジムから世界チャンピオンが出れば、世界中に『カワサキ』の名前を広めることだってできる」。地域密着で成功を収めるフロンターレとのコラボも決まった。4月1日、フロンターレ主催の青空健康体操教室で行うボクササイズの実演が、その第一弾となる。

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