併用禁忌の向精神薬を処方する過失で妻を中毒死させたとして、中央区の会社社長、中川聡さん(49)らが26日、都内の医師に約7400万円の損害賠償を求める訴訟を東京地裁に起こした。
訴状によると、中川さんの妻一美さん(当時36歳)は04年1月から都内の精神科クリニック(08年閉院)で睡眠障害の治療を受け、中枢神経抑制剤、精神神経用剤などの向精神薬を処方されていた。04年9月には1日分として11種33個、その後も10回にわたり同量の薬を医師から処方され、05年1月に死亡した。
行政解剖で胃や血中から、処方されていた精神神経用剤など複数の向精神薬の成分が検出された。死因は薬物中毒と推定された。
この精神神経用剤の医師向け添付文書には、禁忌として「中枢神経抑制剤の強い影響下にある患者には投与しないこと」と記載されている。中川さんらは、承認用量の2倍など医師の処方は明らかに大量投与と指摘し、一美さんは「中枢神経抑制剤の強い影響下」だったと主張している。
また添付文書で併用注意とされる多数の向精神薬を、漫然と長期間投与したことも医師の過失と訴えている。
医師の代理人弁護士事務所は「何も話すことはない」としている。【和田明美】
〔都内版〕
毎日新聞 2010年3月28日 地方版