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フォトリポート北海道:「責任ある治療できない」非常勤医の別れ--斜里町 /北海道

 ◇現場の踏ん張り、限界

 網走管内斜里町が運営する国民健康保険病院(病床数111床)で非常勤内科医師の栂嶺(つがみね)レイさん(43)は22日の勤務を最後に辞職した。06年8月から同病院で勤務を続けてきたが、「医師の踏ん張りだけでは医師不足の現状は改善しないと町側に分かってもらいたかった」と理由を話す。【写真・文 小出洋平】

 最後の当直の夜、「ちょっと診るね」と声を掛けながら入院患者に聴診器を当て患者の容体を確認して回り、翌日早朝には救急患者が運び込まれ治療に追われていた。

 同病院も医師不足に悩む。かつて4人体制だった常勤内科医は06年から2人になり、昨年12月には1人になった。今年4月も1人体制が続く見込み。現在も原則として入院患者を受け入れていない状態が続いている。常勤医の増員を求めてきた栂嶺さんは「入院患者や定期的に通院している患者には主治医として継続して治療にあたることができる常勤医でなければ、責任ある治療ができない」と訴えてきたという。

 世界遺産の知床を抱える同町には年間100万人以上の観光客が訪れる。「登山中に転んで頭を打った」「ホテルの風呂で倒れた」と運び込まれる観光客も多い。さらに隣接する清里町からも救急患者を受け入れている。「市町村で医師を取り合う中、町が医師を確保しようとする取り組みが足りない」と栂嶺さんは指摘するが、町側は「八方手を尽くしているが実らない。シュートは打っているがゴールがないようなもの」と話す。

 栂嶺さんは写真通信社と契約するカメラマンとして知床開拓者の聞き取りを続けているため時間を確保しやすい非常勤でしか働けない事情がある。05年夏から始めた知床開拓者への取材が縁で同病院に着任し、これまで世話になった斜里町民の健康を守るのが恩返しとの思いもあり、ここまできた。任期が終わる直前でも町民からは「やめるんでないよ」と声をかけられ後ろ髪を引かれる思いも残るが4月からは道内の別の病院で医師を続ける。

毎日新聞 2010年3月28日 地方版

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