現在位置:
  1. asahi.com
  2. 環境
  3. 国内(市民・行政)
  4. 記事

漂着ごみ、市民自主回収したのに行政引き取らず 長崎

2010年3月27日7時20分

印刷

ソーシャルブックマーク このエントリをはてなブックマークに追加 Yahoo!ブックマークに登録 このエントリをdel.icio.usに登録 このエントリをlivedoorクリップに登録 このエントリをBuzzurlに登録

写真「このごみの行き場がなくて困っています」と話す長瀬勉さん。ストックヤードには漂着ごみが詰まった袋の山が築かれていた=長崎県対馬市厳原町

地図

 長崎・対馬で、地元のNPOが海岸で集めた漂着ごみ約1200トンが行き場を失っている。産業廃棄物に該当すれば県が担当し、一般廃棄物ならば市が処分するが、県は「市民が自主回収した漂着ごみは一般廃棄物に当たる」との立場で、環境省も2009年に同様の見解を示した。だが市は「財政が厳しく、処理能力もない」と依然、引き取れずにいる。

 ハングルが書かれたガス缶、韓国でのりの消毒に使われる強酸性溶液のプラスチック容器、漁網……。対馬市厳原町阿連の海岸には、大小様々なごみが途切れることなく散乱していた。注射器や冷蔵庫、洗濯機もある。

 「この浜に散らばっているだけで、1トン入りごみ袋で400袋分はあります」。NPO法人「対馬の底力」代表の長瀬勉さん(38)は話す。

 長瀬さんによると、漂着ごみは10年ほど前から目立ち始めた。07年にNPOを立ち上げ、これまで約20回、海岸清掃ボランティアを続けた。県や市にごみの引き取りを求めてきたが、どちらにも断られたという。

 ごみは現在、長瀬さんが県の助言を受け、私費を投じて対馬市厳原町小浦に造った約4300平方メートルのストックヤードに保管中。1立方メートルのごみ袋が高さ3メートルほどに積み重なっている。「生まれ育った島の海をきれいにしたいだけなのに、なぜこんなに悩まされるのか」と長瀬さん。

 海岸漂着ごみの収集や処分については、昨年7月に都道府県が計画をつくり、国が財政支援をすると定めた「海岸漂着物処理推進法」が施行されたが、それ以前は処分方法などの規定がなかった。

 県廃棄物対策課は「漂着ごみは廃棄物処理法に規定されている産廃に当たらず、一般廃棄物と考えた。市には、NPOのごみを引き取るよう助言した」と説明。環境省も09年末に「漂着ごみは自治体が事業として業者やNPOに委託して回収したうち、廃棄物処理法で規定するプラスチック類など20種類に該当すれば産廃に、市民がボランティアで拾えば一般廃棄物になる」との見解を示した。

 対馬市環境衛生課は「漂着ごみを市のごみ焼却場で処分すれば、塩害などで施設が使えなくなる可能性がある」という。08年度に市が国や県の補助を受けて主催した海岸清掃事業では、集めたごみを引き取ったが、北九州市の業者に処理を委託したため、運搬費もかさみ、費用は市内で処理した場合の数十倍になった。「NPOのごみを引き受けても、市単独では負担しきれない」という。

 対馬市には10年度、国から廃棄物処理など環境事業のため4億4千万円の「地域グリーンニューディール基金」が交付される予定。環境省廃棄物対策課は「基金を利用してNPOのごみを処分できないか、県や市でよく相談してほしい」としている。(吉田啓)

検索フォーム

おすすめリンク

携帯電話のストラップに取り付けられる超小型サイズ。FOMA/Softbank 3G用

地球温暖化はどのようにして起こるか?

都市部の気温が周辺部より高くなる現象でもあるヒートアイランド現象。自然環境にも影響します。これからの対策は?


朝日新聞購読のご案内