2007-10-30
書籍の価格構成比をめぐる小考
お待たせしました。遅くなりましたが書きます。
激しく長文です。
- ここに至る経緯
こちらが発端となったエントリ。
こちらで小生にご指名がありました。
id:hobo_kingさんのエントリは続いていますが、本エントリではひとまずid:sparkさんに答える形で少し書いてみようと思います。
- 書くに当たって
まず、小生はもう書店員ではないので、書店員の立場から「それをやられると書店は困る」という議論はしません。
また、hobo_kingさんの仰ることは心情としては分からなくも無いのですが*1、方法的に実現が難しいと思います。
更に、sparkさんが仰るように、書籍とは著者だけが作るものではありません。見えにくい部分ですが、価格構成比の例を見つつ、ちょっと視点を変えてみませんか?
ただし、普通に本が読めれば満足、というのであれば、わざわざこんなややこしいことを考える必要は無いと思います。
- 価格構成比の一例
紙代:6%
製版・写植代:12%
印刷・製本代:7%
版元粗利:32%
印税:10%
取次マージン:8%
これは極一例ですが、書籍の価格構成比を挙げてみました。何か一冊本を思い浮かべて、そこからそれぞれの取り分を計算してみてください。少し実感が湧くと思います。
が、実はこれらの数字、更に内訳がややこしいことになってます。
版元粗利は広告宣伝費や販売管理費を引く前の値です。印税もテンパーとは限りません。例えば、もっと印税率低めの出版契約を結ぶ場合があります。これは売れなさそうとか、少部数とか色々理由がありますが、もし売れ残った場合の税金などを考えると*2、印税率を抑えざるを得ないわけです。
書店マージン、取次マージンも同様。家賃光熱費人件費等払うべき金は沢山あって、実際の利益はそう大したものではないのです*3。
非常にややこしい事になっているのがお分かり頂けたでしょうか。
- 「本」とは?
しかし、このややこしさは故無くして出来上がったものではないのです。
執筆・製紙・製版・印刷・製本・編集・宣伝・広告・在庫管理・流通・販売──これらを全部一手にやることは、非常に難しい。
確かに、書籍を読む際に目立つのは著者です。それは当然のことです。
ですが、「本」が読者に届くためには、このややこしい仕組み無くしては難しいのです*4。貴方が様々な本を読むことが出来たのは、この複雑な仕組みの各段階で、それぞれの仕事に取り組む人間あってのことなのです。
では「本」とは何なのでしょう? 一人作者のものであり、他の人間は取り分無しでいいんでしょうか?
それでは本は出来ません。少なくとも、商業出版で全国流通する紙の本は作れませせん。
製作工程の初めから、流通の末端まで見渡してみると、「本」というのはこのややこしい工程の始めから終わり*5まで全うして、初めて「本」になるんじゃあないかな、などと思ったりもします。
これでご期待に応えられたでしょうか?
今ひとつ自信がありませんが、ひとまずこれにて。
でも、本を読む時に、いちいち本エントリで書いたような鹿爪らしいことを考える必要はびたいち無いと思う次第です。
というか小生はあまし考えてません。うひょーおもしれーやべーもえるーもえしぬー、とかそんなですよ。わはは。
- 111 http://satoshi.blogs.com/life/2010/03/books.html
- 76 http://d.hatena.ne.jp/
- 41 http://d.hatena.ne.jp/kim-peace/20070516/p1
- 39 http://d.hatena.ne.jp/Siphon/
- 38 http://b.hatena.ne.jp/entry/http://d.hatena.ne.jp/kenkaian/20071030/1193750956
- 33 http://reader.livedoor.com/reader/
- 29 http://www.google.co.jp/search?hl=ja&q=書籍 値段&lr=
- 27 http://ime.nu/d.hatena.ne.jp/kenkaian/20071030/1193750956
- 26 http://d.hatena.ne.jp/spark/20071028/1193573371
- 25 http://d.hatena.ne.jp/spark/
非常に参考になりました。
数字が出てみると改めてシビアさが実感できますね。
小出版社が作った、部数の少ない、しかし素晴らしい装幀の書籍が、曲がりなりにも全国流通するのは凄いことなんだと改めて確認しました。
それに、作家は一人なんですよね。なんともえらいことです。
僕もまだまだ修行中の身ですので、知らないことや間違って覚えていることが沢山あると思います。毎回業界絡みのエントリを書くときは冷や汗ものです。
ともあれ、今後とも宜しくお願いいたします。
>価格構成比の一例
ありがとうございます。読み手としても参考になりますです。
20年程前に小さめの書店でバイトをしていたのですが、そのとき粗利が5〜7%とか聞いたような
記憶があるのですが、勘違いか、チェーン店だったので本部が掠める分とか引かれてたのかも知
れないです。
書店マージン22%で軽く計算してみると、一日平均10万円売り上げて年間3600万。
で、粗利が800万弱。これだとやっと一人食える勘定ですね。
当時店にはバイトを入れて5人くらい居たのですが、たしか日30万売り上げるとささやかなお祝い
がもらえる仕組みがあったので、平均すると多分日に15万くらいだったのかなー?
今から思うと苦しい台所だったんだと想像しますです。
はじめまして、ようこそ。
印税率はかなり色々ですね。版元・レーベル・ジャンル・著者……色んな要因で変わります。
例えば、うちの父は研究者ですが、印税率は7%くらいですし、割と堅めの本なので刷り部数もそう多くありません。当該ジャンルではそれなりに売れても、印税としてはとても生活はおぼつかない、となるわけです。
とさん>
うーん、そのパーセンテージはなんでしょうね。ある程度のコストを引いた割合だったのかも知れません。
物件の家賃・光熱費・人件費・運送会社への支払いなどを引いていくと、やっぱり厳しいですね。書店員の待遇が悪くなるのも当然です。取引正味が1%下がるだけでも相当違う筈なんですが、それもなかなか難しく……。
どうも特効薬は無さそうな気がいたします……。