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「ゆうちょ預入限度額2000万円へ増額」は正しいか?! ―前田拓生
2010年03月27日10時08分 / 提供:アゴラ
「ゆうちょの預入限度額を2000万円に」という亀井大臣の発表に対して、いろいろと異議が出ているようです。まぁ、ゆうちょ改革については、この限度額増額だけではなく「日本郵政の内部における消費税をゼロに」など、かなり無謀なものも入っているので、このまま通すのは問題でしょうが、「2000万円への増額」の話に限れば、これは突然出てきたものではありません。
少なくとも今年の1月には出ていた話であり、私はそれを題材にして「ゆうちょ限度額引き上げに思うこと」をアゴラへ投稿しています(ここでは「良くない」という結論になっています)。
したがって、今さら閣僚からいろいろと異論が出るのは如何なものでしょうね。議論をするなら、それなりに時間はあったはずです。
そもそも元大蔵官僚を多くの反対を押し切って社長に就けたのも、この2000万円への増額も、結局のところ「国債の安定的な保有機関づくり」の一環であり、今の政権運営からすれば、誰も反対できないのではないでしょうか(亀井大臣も「国債保有機関づくり」という話は明確に否定していますが・・・)。
「財政」について、現政権は当初から無頓着すぎるように感じていましたが、やはり、かなり問題があります。例えば、財源は「必ずある」「何とかなる」という話の中で「子育て手当」を成立させてしまったものの、果たして「事業仕分け」くらいのやり方で何とかなるのでしょうか。もし、財源がない状態で子育て手当を行えば、それは単なる「バラマキ」に過ぎません。しかも「やっぱり(財源ねん出は)無理でした」ということになっても、それでも「命を守りたい」という話になるに決まっています。
そうなれば、結局、国債増発になるしかないでしょう。当然、来年度になって景気が素晴らしく良くなるとは思えないので、税収が大きく伸びる可能性も低く、それでも予算執行は減らせないと各閣僚はいうでしょう。となれば、来年度も44兆円を上回る国債増発になってしまいます。さらに悪いことに「子育て手当ては満額を予定している」ので、今年度よりも2兆円ほどは増加することになります。ということは、果たして「どのくらいの国債発行になるのか」。考えるだけで恐ろしい限りです。
そのような中、日銀の国債保有残高は、現在50兆円ほどになっています。他方、銀行券発行は70兆円くらいですから、現状の「銀行券ルール」でいえば、あと「約20兆円」しか追加で保有できないことになります。
となれば、「Xデーは?」と不安になります。が、実際には市場自体は落ち着いています。これは「結局、ゆうちょが買うのでしょう」と市場が思っているからではないでしょうか。つまり「ゆうちょ預入限度額2000万円」は既定路線と考えるべきであり、閣僚が云々言っているような場合ではないはずです。
閣僚の中には「2000万円増額をするにしても、運用方法をはっきり示さないと、国債買入機関を作るだけになってしまう」と言っている方もいますが、増税議論もなく、それでいて、結果として「拡張的な財政支出」を承認しておいて、一体、積み上がった政府債務残高をどうするつもりでいるのでしょうか。むしろ、はっきり「国債買入機関を作るのだ」と言ってしまった方が、事はスッキリするように思います。
とはいえ・・・
国債買入機関ができたから「景気刺激のためにもっと財政支出を」などと言っていては意味がありません。これはもっとも最悪なシナリオです(だから、1月には「限度額引上げは問題」としてアゴラに投稿しました)。
つまり、Xデーまでの「時間的に余裕を作る」ということで「ゆうちょ預入限度額2000万円」にするのは、ある意味「致し方ない」というだけであり、限度額引き上げを行うのであれば、財政規律について本気で議論をすべきです。
まぁ、ここで問題になるのは「民業圧迫」でしょうね。民間銀行、特に信金、農協などの地域金融機関の預金はおそらくかなりの流出を覚悟しないといけないでしょう。預金というのは非常に低い金利で調達できるので、銀行経営という意味では、非常に厳しいことになります。
けれども・・・
今、銀行等の運用のかなりの部分が「国債」ですから、その受け皿機関がないまま、国債を発行し続けることでXデーになった場合、大変なことになるのは銀行等ですから、「民業圧迫」になったとしても、ここは受けざるを得ないように思います。民間の場合、国債が危ないとなれば、いち早く売り逃げるに決まっているわけで、それを政府や中央銀行が止めに入ることは難しいのですから・・・
ところが「国債買入機関」というのは、当然、単にゆうちょをナローバンク化するだけの話ですから、ゆうちょの業務として「良いか?」となれば、疑問もありますし、これだけでは「何の解決にもなっていない」といえます。
しかし、ここまで積み上がってしまった政府債務残高については「もう待ったなし」ですから、「ゆうちょの預入限度額2000万円へ引き上げ」をすることで「財政規律についての議論をする“時間を作る”」ということを前提にすると「正しいやり方である」と考えることは可能です。
■1月分との結論の相違について
1月分は「国債の受け皿機関」としてゆうちょをナローバンク化するだけであり、さらに「財政支出を拡大する」のであれば「大きな問題である」という主張でした。
これは現在も変わりません。
けれども、現政権は財政規律に無頓着すぎる点が多く、このままではXデーも近いと思われます。なので「ゆうちょの預入限度額を引き上げる」ということで市場に対して「財政規律を考える時間」を作り、その時間を利用して、実際に増税議論等をするのであれば「正しいやり方である」と考えたわけです。
実際には「国債の受け皿機関」ができれば、閣僚たちには「財政拡大を行う」というインセンティブが生まれる可能性があり、もし、「国債の受け皿機関」を作ることで、さらに財政拡大をするのであれば、それは非常に問題ですから、これは「良くない」ということになります(つまり、この場合には1月と同じ結論になります)。
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「財政」について、現政権は当初から無頓着すぎるように感じていましたが、やはり、かなり問題があります。例えば、財源は「必ずある」「何とかなる」という話の中で「子育て手当」を成立させてしまったものの、果たして「事業仕分け」くらいのやり方で何とかなるのでしょうか。もし、財源がない状態で子育て手当を行えば、それは単なる「バラマキ」に過ぎません。しかも「やっぱり(財源ねん出は)無理でした」ということになっても、それでも「命を守りたい」という話になるに決まっています。
そうなれば、結局、国債増発になるしかないでしょう。当然、来年度になって景気が素晴らしく良くなるとは思えないので、税収が大きく伸びる可能性も低く、それでも予算執行は減らせないと各閣僚はいうでしょう。となれば、来年度も44兆円を上回る国債増発になってしまいます。さらに悪いことに「子育て手当ては満額を予定している」ので、今年度よりも2兆円ほどは増加することになります。ということは、果たして「どのくらいの国債発行になるのか」。考えるだけで恐ろしい限りです。
そのような中、日銀の国債保有残高は、現在50兆円ほどになっています。他方、銀行券発行は70兆円くらいですから、現状の「銀行券ルール」でいえば、あと「約20兆円」しか追加で保有できないことになります。
となれば、「Xデーは?」と不安になります。が、実際には市場自体は落ち着いています。これは「結局、ゆうちょが買うのでしょう」と市場が思っているからではないでしょうか。つまり「ゆうちょ預入限度額2000万円」は既定路線と考えるべきであり、閣僚が云々言っているような場合ではないはずです。
閣僚の中には「2000万円増額をするにしても、運用方法をはっきり示さないと、国債買入機関を作るだけになってしまう」と言っている方もいますが、増税議論もなく、それでいて、結果として「拡張的な財政支出」を承認しておいて、一体、積み上がった政府債務残高をどうするつもりでいるのでしょうか。むしろ、はっきり「国債買入機関を作るのだ」と言ってしまった方が、事はスッキリするように思います。
とはいえ・・・
国債買入機関ができたから「景気刺激のためにもっと財政支出を」などと言っていては意味がありません。これはもっとも最悪なシナリオです(だから、1月には「限度額引上げは問題」としてアゴラに投稿しました)。
つまり、Xデーまでの「時間的に余裕を作る」ということで「ゆうちょ預入限度額2000万円」にするのは、ある意味「致し方ない」というだけであり、限度額引き上げを行うのであれば、財政規律について本気で議論をすべきです。
まぁ、ここで問題になるのは「民業圧迫」でしょうね。民間銀行、特に信金、農協などの地域金融機関の預金はおそらくかなりの流出を覚悟しないといけないでしょう。預金というのは非常に低い金利で調達できるので、銀行経営という意味では、非常に厳しいことになります。
けれども・・・
今、銀行等の運用のかなりの部分が「国債」ですから、その受け皿機関がないまま、国債を発行し続けることでXデーになった場合、大変なことになるのは銀行等ですから、「民業圧迫」になったとしても、ここは受けざるを得ないように思います。民間の場合、国債が危ないとなれば、いち早く売り逃げるに決まっているわけで、それを政府や中央銀行が止めに入ることは難しいのですから・・・
ところが「国債買入機関」というのは、当然、単にゆうちょをナローバンク化するだけの話ですから、ゆうちょの業務として「良いか?」となれば、疑問もありますし、これだけでは「何の解決にもなっていない」といえます。
しかし、ここまで積み上がってしまった政府債務残高については「もう待ったなし」ですから、「ゆうちょの預入限度額2000万円へ引き上げ」をすることで「財政規律についての議論をする“時間を作る”」ということを前提にすると「正しいやり方である」と考えることは可能です。
■1月分との結論の相違について
1月分は「国債の受け皿機関」としてゆうちょをナローバンク化するだけであり、さらに「財政支出を拡大する」のであれば「大きな問題である」という主張でした。
これは現在も変わりません。
けれども、現政権は財政規律に無頓着すぎる点が多く、このままではXデーも近いと思われます。なので「ゆうちょの預入限度額を引き上げる」ということで市場に対して「財政規律を考える時間」を作り、その時間を利用して、実際に増税議論等をするのであれば「正しいやり方である」と考えたわけです。
実際には「国債の受け皿機関」ができれば、閣僚たちには「財政拡大を行う」というインセンティブが生まれる可能性があり、もし、「国債の受け皿機関」を作ることで、さらに財政拡大をするのであれば、それは非常に問題ですから、これは「良くない」ということになります(つまり、この場合には1月と同じ結論になります)。
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