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発信箱:分かっていたのに=伊藤智永(ジュネーブ支局)

 「民主党が大勝してもちっともワクワクしません」

 昨年の衆院選直後、敬愛する先輩記者がこんな手紙をくれた。メディアの沸き立ち方があまりに大仰で、心配になったらしい。でも当時、そんな意見は「へそ曲がり」と封殺する空気があった。

 当コラムに「20年前の自民党経世会の政治に戻る予感が」と書いたら、著名な政治学者に「後ろ向きすぎる」とたしなめられた。3カ月もしたら、その先生が「田中角栄」や「金丸信」を引き合いに大いに論じていたけれど。

 それにしても妙だ。今になって「失望した」と言う人たちの挙げる理由は、選挙前の新聞に全部書いてある。

 政治とカネの問題、「小沢チルドレン」の誕生、「小沢支配」の再来、ふらつく鳩山発言、「七奉行」の腰抜けぶり、バラマキだらけの公約、財源なく実現不能なマニフェスト、外交無策、労組依存……。

 「政権交代に期待するなと言うのか」と怒り出す人がいる。でもこの10年、小泉・安倍・福田・麻生・鳩山と、政権発足時の期待はいつも高い。むしろ政権党が代わっても、半年後の失速も含めて政権の「型」が変わらないのはなぜなのか。根拠なき期待に失望するより、そこを考える方が近道かもしれない。

 世論が過熱急冷式ならなおのこと、報道と学者には息の長い冷めた目が欲しい。首相が「革命だ」と言えばオウム返しに唱和し、わずか半年後に世論と一緒にがっかりしているようでは、記者も識者も早晩お払い箱だろう。

 「小沢辞任」の世論が増えたら、次の合言葉は「民主党らしさに返れ」? 壁にぶつかるとアマチュア時代を懐かしむのは、プロになりきれないからに決まっている。

毎日新聞 2010年3月27日 0時15分

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