【社会】子ども手当の経済効果は?2010年3月27日 10時45分 子育て世代へ現金を支給する子ども手当法が成立し、教育や子どもに関連する業界では、早くも経済効果への期待が膨らんでいる。鳩山政権の目玉政策は、親たちの財布のひもを緩められるか。 「インパクトは大きい」と手当を歓迎するのは東海地方で学習塾「栄光学園」などを経営するエヌイーホールディングスの川口進会長(61)。「ここ数年、大手企業に勤める親でさえ、不景気で子どもの塾通いを控えるようになった。手当の心理的な効果はあるでしょう」と話した。 名鉄百貨店(名古屋市)は、6月に予定されている最初の手当支給を機に、親子連れや子育て世代の集客を図る方針。おもちゃや子供服、マタニティー関連商品に力を入れ、「特に夏休みの集客を増やしたい」(広報担当者)ともくろむ。 岐阜市の子供服販売店主(44)は「定額給付金の時は目に見えて売り上げが増えることはなかった」と経済効果に疑問符を付けながら、「満額の2万6千円が毎月もらえるようになれば、国全体でそれなりの効果を生み出す気がする」と話し、支給額倍増に期待した。 津市の水泳教室「津トップスイミングクラブ」の大橋洋之社長(42)も「子どもの習い事に使ってもらえるだろうか」と思案顔。「製造業で働く親の残業が減り、子どもの習い事を少なくして生活しているという話も聞く。2万6千円が支給されれば違ってくるかもしれないが…」と話した。 ◆施設の子、適用不透明 中学生までの子どもを持つ親などに月1万3千円を国から支給する「子ども手当」。児童養護施設などで暮らす子どもは法の網から漏れており、差別が生じる。指摘を受けた政府は、政府の交付金で各都道府県が設ける「安心こども基金」から同額を支給してもらう方針だ。 「ゲーム機のように一般の子どもたちは持っているが、施設の子どもたちは買えない物を買うのに使いたい」。名古屋市守山区の児童養護施設「和進館児童ホーム」の籠橋芳孝施設長はこう話し、支給を心待ちにする。「残りは子どもたちの将来のため積み立てます」 しかし、厚生労働省児童手当管理室によると、基金から補助金として支出された場合、使い切らなければ返却しなければならず、使途も限られる。差別を解消できるかはなお不透明で、同室の担当者は「支給の対象や方法など課題を検討中で、早期に結論を出したい」と話す。 愛知県の別の児童養護施設の施設長は「利用できる範囲が限られるとしたら、どうか」と疑問を呈する。名古屋市子育て支援課の担当者は「虐待で施設にいる子の親に相当額を渡すのかなど、分からない部分がある」と不安を隠さない。 ◆専門家、予測分かれる 子ども手当で経済効果は期待できるのか。専門家の予測はイエスとノーに分かれる。 東海東京調査センター名古屋事務所、加藤守シニアアナリストは「実際に支給されたときの喜びは大きく、その心理が貯蓄ではなく、消費に向かわせるのではないか」と前向きにとらえる。特に、今まで抑制していた外食や旅行関連などの支出が増えるとみる。 一方、三菱UFJリサーチ&コンサルティングの内田俊宏エコノミストは、「雇用・所得環境の厳しさが続いており、消費に回るのは3分の1ぐらいで、残りは貯蓄に回る」と予想。共立総合研究所の江口忍主席研究員も「多くは消費より貯蓄。増税に備えてためておくと考えられるから。もう一つは、子どものためであっても今ではなく、先々必要になったときに使うという人もいるだろうから」と分析した。 (中日新聞)
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