2010年1月30日 11時56分 更新:1月30日 11時59分
【ワシントン草野和彦、北京・浦松丈二】米国防総省は29日、総額64億ドルの武器を台湾に売却する方針を決定し、米議会に正式に通告した。昨年1月のオバマ政権の発足後、台湾への武器売却決定は初めて。中国の何亜非外務次官は30日、「強烈な憤慨」を表明し反発。中国側は米国との軍事交流停止など対抗措置を検討し始めた。
インターネット検索米最大手グーグルが中国でサイバー攻撃を受けたとされる問題に続き、米中摩擦の新たな火種になりそうだ。
売却が決定されたのは、地上配備型迎撃ミサイル(PAC3)や、多目的ヘリコプターUH60ブラックホークなど。台湾が希望したF16戦闘機は含まれなかった。米政府高官は「議会への通告に先立ち、在米中国大使館に決定を通知した」と述べ、中国への配慮をにじませた。
だが、中国の何次官は台湾への武器売却が米中関係の「重要な分野の交流・協力に深刻で消極的な影響を及ぼす」と警告。さらに「中国内政への乱暴な干渉であり、中国の安全保障と祖国統一事業を損なうものだ」と強調し、即時撤回を要求した。
今回の武器売却は、対中国をにらんだ台湾防衛を義務づける米国の「台湾関係法」に基づくもので、中国は以前から反発。ブッシュ前政権が08年10月、65億ドルの武器売却を議会に通告した際には、軍事交流を中断した。
軍事交流はオバマ政権発足後の昨年2月に再開。米政府高官は「中国側が再び、中断するかもしれないが、すべきではないし、中国側にもそう伝える」と自制を求めた。
協調関係が演出されてきた米中だが、昨年9月には、米国が中国製タイヤの緊急輸入制限を発動。グーグル問題や今回の武器売却に続き、今後はチベット仏教最高指導者ダライ・ラマ14世の訪米も予定され、当面はぎくしゃくした関係が続くとみられる。
来月には核開発を巡る国連安保理の対イラン制裁論議が本格化する見通しで、制裁に消極的な中国の説得に向けたオバマ大統領の手腕も問われる。