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吉野家、「05年下期の米牛肉輸入再開」に早くも照準

2004年12月9日

吉野家ディー・アンド・シーが2005年度に100店の新店開設を計画していることが日経ビジネス誌の取材で分かった。同社の新規出店は過去数年間80店程度。2004年度には約30店に減るが、「今期に抑えた分、来期は取り戻す」と、加藤建司専務は語る。


2003年12月のBSE(牛海綿状脳症)騒動、それに続く米国産牛肉の輸入禁止をきっかけに、吉野家の業績は低迷した。2004年度中間決算では、売上高は前年同期比17.5%減の585億円、経常利益は23億円の赤字に転落した。下期の出店は当初計画の36店を7店に絞り、店舗の改装も見合わせる。


9月以降、コスト削減策の効果が出て単月ベースで黒字になっており、最悪期は脱した。それにしても米国産牛肉の輸入解禁、業績の本格回復を待たずに強気の出店戦略を打ち上げたのはなぜか――。


半年の開発期間を織り込む


現状では米国産牛肉の輸入再開への道筋はまだ不透明なまま。輸入解禁は、早くても2005年の下期になる見込みだ。にもかかわらず、2005年度に100店の新規開設を計画したのは、輸入再開時に素早く対処し、一気に業績回復を狙うためだ。出店開発には半年はかかる。今は出店を抑制しているために、不動産業者などから吉野家に寄せられる物件情報が減っている。まず年明けには出店開発の体制を再構築して情報収集を始め、来年下期の出店戦略に備える考えだ。


資金面の手当ても終えた。11月15日に実施した転換社債型新株予約権付社債(CB)による100億円の調達だ。


100億円の使い道は、新店開設だけではない。牛肉のスライス処理などを行う工場設備の拡張に20億〜30億円の投資を計画している。もともと工場の処理能力は限界に達しつつあったのだが、需要の急減により当面は間に合う状況になっていた。このため、輸入解禁で牛丼が復活して一時的に需要が急増した場合には、牛肉の処理が追いつかない可能性もある。牛丼再開に備えて、確実に供給できる体制を整えておこうというわけだ。


もっとも今回のCB発行について、複数のアナリストが「なぜ実施するのか、狙いが分からない」と指摘する。吉野家には約90億円の現預金があり、9月以降はキャッシュフローもプラスに転じている。わざわざ市場から資金を調達せずとも、自前で賄える体力があると判断しているためだ。


再開まで長引けばM&Aも


こうした疑問に対して、CB発行を決断した狙いを「先行きが見えない時はキャッシュを持っているのが一番強い」と加藤専務は説明する。米牛肉輸入の再開がさらに遅れれば、牛丼頼みの成長戦略は描けない。「今回調達した資金でM&A(企業の合併・買収)を積極的に進める可能性も否定しない」と加藤専務は明かす。


現状では、牛丼の有無が、各チェーンの明暗を分けている。9月17日に豪州産牛肉による「新・牛丼」の販売を開始した「すき家」を運営するゼンショーは、9月以降2カ月連続で既存店売上高の前年同月比が2ケタ増を記録している。10月13日に「牛めし」を再開した松屋フーズも、10月の既存店売上高の前年同月比は大きく改善した。これに対して、吉野家では既存店売上高の前年同月比は低迷を続けている。12月2日、豪州産牛肉を使った新メニュー「牛焼肉丼」を全国で導入して競合チェーンに対抗する。


2004年中間期決算では、連結ベースの売上高でゼンショーが吉野家を上回った。吉野家が独り勝ちを続けていた牛丼チェーン業界の構図も、ここにきて変わりつつある。


米牛肉の輸入再開に早くも照準を合わせて復活を期する吉野家の戦略、吉と出るか凶と出るか。(戸田 顕司)

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