トヨタ自動車の一連のリコール(回収・無償修理)をめぐる米議会公聴会が終わったが、焦点の「意図せぬ急加速問題」は未解決のまま残った。電子制御系統が原因とする米議会の疑念を払しょくするため、トヨタは新たに外部機関に調査を委託。客観性を高めて火消しを狙う。しかし、複雑にプログラム化された電子制御系統の検証は困難との見方が大勢だ。
 問題となっているのは、アクセルの踏み加減に応じてエンジンの出力を調整する電子制御スロットル・システム(ETCS)と呼ばれる装置。米議会の一部議員は、この装置が何らかの原因で誤作動し、急加速を引き起こしたのではないかとの疑いを強めている。
 これに対し、日本総合研究所・創発戦略センターの宮内洋宜研究員は「欠陥の有無を証明するのは未確認飛行物体(UFO)の有無を証明するようなもの。問題の幕引きは無理」と断言する。
 理由の一つは、ETCSがどのような条件下で誤作動するかが特定されていないことだ。米運輸省の道路交通安全局(NHTSA)は、急加速が報告されたレクサスを買い取って調査を始めたが、国土交通省は「何通りもの条件で走行試験をする必要があり、異常を再現すること自体が非常に難しい」(リコール対策室)と指摘する。
 異常が再現できなければ、「電子系統に問題はない」とするトヨタ側と、それを疑う米議会側の主張は平行線が続くことになる。
 また、第三者による電子制御プログラムの解読は事実上不可能といわれる。調査を委託された外部機関も結局はトヨタ側が提供するデータに頼らざるを得ず、客観性の点では「あまり意味がない」(外国メーカー技術者)との意見もある。(2010/03/04、肩書き・名称、年齢はいずれも記事配信当時のものです)