【ニューデリー=武石英史郎】インドのシン首相は12日、同国を訪問中のプーチン・ロシア首相と会談し、空母や艦載機の購入をはじめ軍事分野で幅広い合意に達した。インドは、空母建造で遠洋進出を本格化させようとしている中国に対抗。同様に対中警戒感を強めているロシアは、インドへの武器の売り込みを加速させている。
インドにとって、ロシアは兵器の60〜70%を供給する最大の調達先。主力戦闘機の供給や巡航ミサイル、原子力潜水艦の開発などで幅広い関係を築いてきた。近年、イスラエルや米国がインドに急接近する中、総額100億ドルとされる巨額合意でロシアが巻き返しを図った。
会談の目玉は、旧ソ連時代の1987年に配備された空母アドミラル・ゴルシコフ(約4万5千トン)の引き渡しだ。2004年に9億7400万ドルで基本契約が結ばれたが、インド側が装備の刷新を求めて価格の調整が難航。今回、23億ドルで妥結し、ロシア側は12年末までの引き渡しを明言したと伝えられている。
インドは現在、英国から購入した空母1隻(約2万8千トン)を保有している。1950年代に建造され、82年のフォークランド紛争で使用された年代物で老朽化が激しく、代替艦の入手を急いでいた。ゴルシコフに加え、南部ケララ州の港で4万トン級の国産空母を建造中で2014年ごろの就航を目指している。
両国間には、ゴルシコフの艦載機ミグ29K戦闘機を16機売買する契約があり、その一部が昨年末、インド側に引き渡された。インドは今回、さらに29機を追加購入することで合意し、国産空母にも配備する方針だ。
インドが海軍力整備を図る背景には、62年に国境紛争を経験した中国への対抗意識がある。中国は2隻の空母の建造を急ぐ一方、パキスタン、スリランカ、ミャンマー(ビルマ)で、インドを取り巻くように港湾を建設。「将来の軍港への布石ではないか」(海軍筋)とインド側は警戒感を募らせていた。