実際に、昨年12月の人気ページは、(1)「ワンピース(マンガ)」(2)「嵐(ジャニーズ)」(3)「JIN―仁―(テレビドラマ番組)」――。人気の話題では、ネットの掲示板「2ちゃんねる」の傾向に似ている。東大の木村忠正准教授(情報社会論)は「利用者の多くが社会の事柄よりも、メディア上の話題に関心を持っている。日本で特有なネット利用のあり方がウィキペディアのサイトにも反映している結果だろう」と指摘する。
一方で、学術的な専門知識によるページを増やそうとする動きもある。土木学会応用力学委員会では07年度から、大学院生が中心となって年1回合宿し、専門分野の新しいページを作成する試みを始めた。同委員会では「学会の社会貢献と共に、院生への教育効果が期待できる」。管理者側も「学会でサイトを説明する機会を持ち、専門家の参加を促していきたい」。
また、日本語版では利用者登録をせず、「匿名」で投稿する人の多さも特徴だ。英語版やスペイン語版では3割だが日本語版は5割近く。英語版では実名を明らかにした投稿も多い。山本さんは「匿名だと過去の投稿履歴をたどることもできない。記述に対する責任の意識が低い」と指摘する。ウィキペディアは登録した上での投稿を推奨している。
木村准教授は「日本の利用者には自分たちで作り上げようとする意識が薄い。ウィキペディアの今後の成長のためには、限られた関係者だけで議論や運営をするのではなく、いかに広く利用者に関心を持ってもらうかが重要ではないか」と話している。(湯地正裕)