管理者への立候補の条件は、投稿者として50回以上の編集実績などハードルは高くはない。だが、増えない。約317万ページある英語版の管理者は1711人。約65万ページの日本語版と、同じページ数あたりで比較しても管理者は英語版の2割足らずだ。
背景には、煩雑な事務作業に加え、関係者間の調整をする必要もあり負担の大きさがある。プライバシーの侵害や事実誤認など当事者らからの指摘も多い。要求に従って削除した方が楽な事例も多く、ある男性管理者(40)は「ページを存続させるには管理者として相当な知識が必要」という。一方、「削除が多いと特定の管理者をあげつらう投稿者も増えており、ネット上の攻撃対象になることもある」(別の管理者)という。
日本語版では昨年末から、管理者への立候補を呼びかける初のキャンペーンを実施した。ウィキペディアに詳しい産業カウンセラーの山本匡紀さんは「管理者が増えることで悪意ある書き込みへの対応は向上する。だが、削除も事後処理に過ぎず、それまでに発生した損害に対して誰も責任が取れない構造的な問題は残る」と指摘する。
■日本だけポップカルチャーに集中
より信頼性の高い百科事典を目指すが、日本語版特有の悩みも抱えている。ウィキメディア財団によると、日本語版の全閲覧数のうち8割が、アニメやテレビ番組、芸能人など「ポップカルチャー」(大衆文化)のページに集中している。英語版で大衆文化は4割、フランス語で2割足らず。政治や地理などのページの人気が高い他言語に比べて際だっている。