きょうのコラム「時鐘」 2010年3月26日

 銀メダルを手にした田畑、穂積両選手の凱旋(がいせん)に、五輪の興奮を思い出す。あんな面白い種目があるとは知らなかった

団体追い抜きは、3人1チームで滑る。勝負の判定は先頭ではなく、最後の選手のタイムというのが絶妙である。2人がどれだけ速くても、残る1人が遅れれば負けてしまう。つらい風よけという役目の先頭を上手に交代しながら、「仲良く」ゴールする

他人を風よけや踏み台にして、上手にのし上がっていく。世間では、珍しくない振る舞いだが、そんな争いばかりじゃないよ、と教えてくれた。日本の3人は、控えの中学生にもメダルをかけ、喜びのおすそ分けをした。最後までさわやかさを貫いた選手たちだった

つらい先頭の役目を上手に代わってこそ強いチームになれる。門外漢にも、それくらい分かる。逆風でガクンと速度が落ちても、先頭を譲らない。みんなでやろうぜ、と声が掛かっても、どこか冷ややか。それでは強くはなれまい

別のチーム日本の健闘も期待したい。が、カネで失速し、女でつまずく。これで応援席が盛り上がれと言われても、無理な注文ではないか。