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「浜松市子ども育成条例」成立

2010年03月25日

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先週末、街頭でチラシを配り「条例制定の経緯は民主的でない」などと訴える右から小沢明美、山口祐子、鈴木恵の各浜松市議=浜松市中区旭町

 「社会で子育てを支えよう」とうたった「浜松市子ども育成条例」が24日、市議会2月定例会で可決、成立した。県内初の「子ども条例」の誕生だが、延べ9千人以上の意見を元に練り上げた市当局案が、最大会派の自民党浜松による「国を愛する心」などを盛り込んだ修正案に取って代わる「波乱」もあった。可決までの経緯に対し「民主的でない」「条例は政争の具か」との批判が出ている。(馬場由美子)

 2007年の市議会9月定例会。「子ども第一主義」を掲げる鈴木康友市長が、子どもに関する条例制定を問われて「検討する」と答弁してから、市の条例制定への模索が始まった。市こども家庭部は同様の条例を制定している全国約50の自治体の条文を検討し、識者や子育て支援団体などに意見を聞いて条例案の素案をまとめた。

 09年9月にはパブリックコメントを実施、1カ月で340件の意見を集めた。「通常は100件以下。市民の関心が高かった」と同部の菊池渉次長。これらの意見を反映した全14条の当局案は、市議会2月定例会に提案された。

 しかし市議会の反応はいまひとつ。「11年に市長選を控える市長は、条例を制定すれば『マニフェスト達成』だが、必要性も含めてもっと時間をかけるべきだ」と市議の一人は話す。

 「継続審議」の可能性が強まってきた2月中旬、4月からの施行を目指す鈴木市長の「強い決意」を聞いた自民系市議は、条例可決への協力を条件に文言の修正を提案した。「郷土を愛する心をはぐくむ」の部分に「国」を挿入し「郷土や国を愛する心をはぐくむ」と修正をかけて11日の市議会厚生保健委員会に提出。7対3の賛成多数で可決に持ち込んだ。

 「愛国心を養う教育は必要。我々の常々の主張を入れていただいた。本当は『我が国を愛する心』としたかったぐらいだ」と、ある自民系市議は打ち明ける。しかし約3万人の外国籍市民が住む同市の「多文化共生」の理念とは相いれないとして、そこまでは踏み込まなかった。

 鈴木市長は採決前、朝日新聞の取材に対し、自民系市議らと修正案について事前に協議したことを認め「今回の修正案によって、市が練ってきた条例案を補強していただいたと思っている」とコメント。委員会で批判が噴出した経緯については「最終的に議案を判断するのは議会。議員が侃々諤々(かんかんがくがく)の議論するのは望ましいこと」と述べた。

 民主党系の鈴木市長に存在感を示したい自民党市議。少数会派の市議からは「このようなやり方は民主的な手法ではない」との批判が出ている。

 条例案に意見を述べてきた子育て支援団体の女性は「多くの市民がかかわってつくってきた条例案が土壇場で変えられてしまった」と落胆し、「条例はずっと残るもの。政治の駆け引きに使われる『子ども第一主義』って何なのか」と憤慨していた。

 ■浜松市子ども育成条例

 「未来を担う18歳未満の子どもを社会全体で育てる」ことを理念に市、保護者、学校、事業主、市民が果たすべきそれぞれの役割を規定。毎月第3日曜日から始まる1週間を「はままつ子どもふれあい週間」とすることなども盛り込まれた。国が1994年に批准した、子どもの自由な意見表明権の保障や虐待・放任からの保護などを定めた国連の「子どもの権利条約」には触れておらず、罰則規定もない。

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