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国際基準以上の安全にこだわっても仕方がない−−出射孝次郎 吉野家社長 - 08/05/19 | 09:00


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4月21日に吉野家の食品工場で輸入禁止品の脊柱が見つかったが、事態をどう見ている。

 僕らは肉のプロ。箱を開けて骨がついていた瞬間に日本では輸入が禁止されている特定危険部位だとわかり、全面輸入停止という最悪の事態を覚悟した。吉野家は米国産牛を日本でいちばん使用し、輸入再開に向けて最も活動した企業。よりによってという思いはあるが、ルール違反が見つかったので速やかに届け出た。今回は、伝票上で牛バラ肉のものが、現物は特定危険部位だった。あくまでも入れ間違い。米国全体の問題でもなく一工場の問題といえる。輸入停止にしなかった行政の判断は適切だったと思う。

3月に牛丼の24時間販売を再開した直後。業績への影響は。

 報道を通じて勘違いをしたお客様がいて、吉野家の牛丼も安全かどうかわからなくなったという問い合わせがたくさんあった。一方できちんと届け出る企業姿勢が信頼できるとの声もあった。瞬間風速的と見ているが、売り上げは10%弱減少した。今回は全13工場のうちの1カ所が輸入停止となったが、安定的な買い付けに問題はなく、牛丼の24時間販売に影響はない。

米国産牛肉の輸入条件を現状の月齢20カ月以下から30カ月以下に緩和する考えが、昨年12月に日本政府から出た。

 世界では30カ月以下の輸入を認めるのが普通。日本では科学的な問題ではなく政治問題になってしまっている。今回見つかった脊柱も日本以外では危険部位ではない。怖いのは将来外国から相手にされなくなること。韓国は米国産牛の輸入制限措置を段階的に撤廃すると決めた。中国は牛肉を輸入しようと思ったら明日から輸入しますよ。日本がこんな細かい条件を出していたら牛肉が入ってこなくなる。国際基準の安全以上にこだわっても仕方がない。

吉野家としては、30カ月以下に緩和されたほうが望ましい?

 それは当然ですよ。価格もかなり安くなるし、輸入量が増える。吉野家も以前は18〜24カ月の牛肉を使っていたが、現状は15カ月前後。牛肉の仕入れ価格は輸入制限以前に比べ約4倍と高い。スーパーがこれまで扱わなかったのは、需要に対して供給が少ないためだろう。

米国産牛肉の危険性を指摘する声もあるが、どう見る。

 魚の水銀問題など、食に関しては100%安全ということはない。危険物質を排除して、リスク管理し、安全基準を守っていくことが大事だ。今回の食肉加工業者も農林水産省、厚生労働省ともに安全を認定している工場。当社も現地に行って確認しており、何よりも安全を重視している。安全を確認できないと商売しないのが基本姿勢だ。
(山本亜由子 撮影:今井康一 =週刊東洋経済)

いでい・こうじろう
1978年日本大学農獣医学部卒、吉野家(現吉野家ホールディングス)入社、2002年常務商品事業部長。07年10月、新設した事業会社の吉野家の社長に就任、吉野家ホールディングス取締役に。

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