2010年1月28日 10時43分 更新:1月28日 13時4分
東京・秋葉原で08年6月、7人が死亡、10人が負傷した無差別殺傷事件で、殺人罪などに問われた元派遣社員、加藤智大(ともひろ)被告(27)は28日、東京地裁(村山浩昭裁判長)で開かれた初公判で「起訴状については記憶がない部分もあるが、私が犯人であること、事件を起こしたことは間違いありません」と殺傷を認めた。弁護側は「完全責任能力があったことには疑いがある」と主張し、責任能力を争う姿勢を示した。
歩行者天国が惨劇に変わった衝撃的な事件を巡り、法廷での審理が始まった。被害者や目撃者、精神鑑定医、捜査員ら42人の証人尋問が決まっており、8月までに22回の公判が指定されている。公判は長期化する見通し。
起訴内容の認否で加藤被告は「まずはこの場を借りておわびさせてください。亡くなられた方、けがをされた方、ご遺族には大変申し訳ありません」と謝罪した。弁護側は、ナイフで負傷させたとされる被害者のうち1人に対する殺意を否認。取り押さえようとした警察官を刺したとされる起訴内容についても公務執行妨害罪の成立を争う姿勢を示した。
検察側は冒頭陳述で動機について「唯一の居場所だった携帯電話サイトの掲示板が荒らされて書き込みがほとんどなくなり、自分の悩みや苦しみが無視されたと怒りを深めた。派遣先工場からも必要とされていないと思い、自分の存在を認めさせ復讐(ふくしゅう)したいと考えた」と指摘した。
責任能力に関しては、捜査段階の精神鑑定で何らの精神障害も認められなかったことに加え、違法性の認識があったなどとして、完全責任能力が認められると主張した。
弁護側は冒頭陳述で、「加藤被告は仕事ぶりもまじめで、極悪非道な人生を送ってきたわけではない」と主張。「彼にとって携帯サイトの掲示板が何だったのか。この2点に着目して、なぜ事件が起きたのか明らかにしたい」と訴えた。【安高晋、松本光央】
加藤被告は08年6月8日午後0時半ごろ、東京・秋葉原の歩行者天国の交差点にトラックで突入して、5人をはね、うち3人を死亡させ、さらにダガーナイフで12人を刺し、4人を死亡させたとされる(殺人、殺人未遂罪)。取り押さえようとした警察官をダガーナイフで刺して職務を妨害し(殺人未遂、公務執行妨害罪)、事件に使ったものを含め5本のナイフを所持していたとされる(銃刀法違反)。