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この人と飲みたい(第2、4木曜更新) : 古田敦也(野球解説者)<前編>「ゴールデンルーキー・雄星に足りないもの」
投稿日時: 2010-03-11 22:20:11

二宮: 今回は私の故郷である愛媛に古田さんをお招きしました。古田さんも愛媛はゆかりのある土地なんですよね。
古田: えぇ。オヤジがもともと愛媛県の広見(現・鬼北町)の出身です。僕は野球ばかりやっていたので、オヤジの実家には行ったことがないんですが、スワローズに入って、秋季キャンプでお世話になったり、2000本安打を松山の坊っちゃんスタジアムで打ったり。現役引退してからも、講演で呼んでいただくことが多いですね。個人的には非常にご縁があると思っています。



二宮: 今日はザ・プレミアム・モルツを味わいながら、野球談議や思い出話をしていきたいと考えています。ところで古田さんはビール党?
古田: 最初の1、2杯はビールですね。その次は焼酎とか他のお酒を飲んだりします。もう若くないので、翌日に残らない程度に楽しんでいますよ。

二宮: 現役時代はどうでしたか? スワローズは昔から仲のよいチームですから、飲み会も多かったのでは?
古田: そうですね。お酒は非常にありがたいツールです。お酒が入ることで、本音ベースでしゃべれる部分がありますから、いろんな選手を誘って、飲みに行っていました。逆に若い時は、それこそ広沢克己って大先輩にいつも連れられて、夜の街へ……(苦笑)。「行くぞ!」って言われたら、「はい」と言うしかなかったですからね。

 捕手は盗塁阻止が絶対条件

二宮: 現役を引退されて早いもので、もう3年目。今年のキャンプは、どのくらいご覧になられましたか?
古田: 宮古島のオリックス、石垣島の千葉ロッテ、久米島の東北楽天以外は、ひととおり訪問しました。

二宮: 古巣のスワローズでは、高卒2年目のキャッチャー・中村悠平の評判が良いですね。“古田2世”との呼び声もありますよ。
古田: 確かに彼のスローイングはいいですね。ビックリするほど、肩は強くないですが、フットワークを使ってテンポよくトントンと投げられる。僕のスローイングと似ている部分がありますね。

二宮: スワローズは古田さんが抜けてから、正捕手不在の状態が続きました。昨年FAで相川亮二を補強しましたが、ケガも多い。レギュラーの可能性はありますか?
古田: まだ打つほうはこれからなので、オープン戦で成績を残さないと、2軍スタートになるでしょうね。捕って投げることに関しては問題ないレベルでも、あまりにも打てないと、さすがに試合には出せない。今の野球は城島(健司)、阿部(慎之助)に代表されるように、キャッチャーでもそこそこバッティングが要求されます。1軍で出られないなら、首脳陣としては、まだ若いので、下で経験を積ませるという判断になるでしょう。ただ、数年後にレギュラーを獲るチャンスはあると思いますよ。

二宮: よく訊かれる質問かもしれませんが、キャッチャーにまず必要な条件とは何でしょう?
古田: まず、ひとつ挙げろといわれれば、盗塁を刺す能力でしょうね。なんぼ打っても、走られ放題のキャッチャーだとピッチャーから信頼されない。スローイングは鍛えてもなかなか強くなりませんけど、バッティングはコツをつかめば、あとから伸びてくる。そういう意味では、最初に肩やスローイングの足の運び、キャッチングがしっかりできている子のほうが教えやすい。

二宮: 中村のフットワークやキャッチングはプロとして、どうですか?
古田: フットワークは、もう問題ないレベルですよ。キャッチングはプロのピッチャーのスピードや変化球に対する慣れもあるので、まだこれからの部分もあります。ただ、19歳ということを考えれば、まずまずでしょう。僕が19歳だった時は、大学2年生になって、ようやく朝のグラウンド整備や先輩の使い走りから解放された頃(笑)。そう考えれば、彼は楽しみなキャッチャーですよ。

二宮: キャッチャーでいえば、今年の注目は、何といってもメジャーリーグから復帰した城島です。阪神にとっては大きな戦力アップでしょう。
古田: キャンプで見た時は、報道されている通り、ブルペンに積極的に入って、ピッチャー全員へ声をかけていましたね。彼は言うまでもなく、バッティングも盗塁を刺す技術も持っている。あとは投げるピッチャーが揃うかどうか。新戦力が出てくるかどうかでしょう。

二宮: 過日、藤川球児に会った際には、城島のことを“キャッチャーらしいキャッチャー”だと評していました。「オマエの好きなボールを投げていい」と、投手のことを尊重してくれると。力のあるピッチャーに対して「オレの言うとおりやれ」と押しつけないので、意外だったと言っていました。
古田: でも裏を返せば、「オマエの好きなようにやれ」という強い主張を彼は持っています。若い投手には「自分の言うとおりにやれ」と強制するし、実績のある人には「オマエの好きなようにやれ」と言う。いずれにしても、はっきり自己主張するキャッチャーなんです。逆に矢野(燿大)はどちらかというと、ピッチャーに優しく接して、自分の主張は控えるタイプ。ピッチャーのいいところを引き出そうとしているところはお互い一緒でも、アプローチは正反対ですね。

 雄星と石井一の違い

二宮: 今年のルーキーで最大の注目を集めたのは、埼玉西武の雄星でした。ただ、キャンプに入ってから調子が上がらず、2軍降格。現状では松坂大輔や田中将大のように、高卒でいきなり活躍する形は難しいかもしれません。古田さんの印象は?
古田: 僕がキャンプで会った時の感想を言わせてもらうと、少しガムシャラさがないのは気になりました。たとえば僕が観に行った時は、いいボールがきていなかった。若いピッチャーなら、悔しさもあって、それでもどんどん投げるのが一般的です。ところが、彼はストライクが入らないと練習をやめてしまった。自分で調子の善し悪しを判断してストップをかけられるのは、しっかりしている証拠です。ただ、若いうちから、そういったやり方で良いのか悪いのか……。

二宮: これは貴重な指摘ですね。非常に自分を客観視できる半面、最初から理屈っぽくなりすぎている面があるのかもしれません。
古田: いくら理論が大切でも、最終的にはやらないと上達しませんからね。いつも最善の策をとれればいいですけど、悪いなりに試行錯誤してみないと分からないこともある。キャンプ中、彼はよく「フォームが固まらない」と発言していましたけど、それでも試合に投げないといけなくなったらどうするのか、と言いたい。

二宮: フォーム固めは、あくまでもいいピッチングをするための手段ですからね。それが目的ではない。
古田: そうです。最終的にはバッターに向かっていかないといけませんから。極端なことを言うと、「ど真ん中めがけてバンバン投げてみろよ」と。高校時代は結構、相手に対して向かっていくタイプだったのに、プロに入って妙に形にこだわり過ぎているように感じましたね。また実戦が始まって、バッターと対戦すると変わってくるのかもしれませんが。

二宮: 左の高卒ルーキー、しかもドラフト1位だと、後輩の石井一久(現西武)と比べてどうでしょう?
古田: あいつはボーッとしているように見えて、マウンドに上がるとバーンバーンと腕を振ってきた。最初はコントロールが悪かったけど、2年後、3年後にはドーンと伸びました。彼と比較すると、余計に雄星君が物足りなく感じてしまうんです。まじめな子なので、それがいい方向に出ればいいんですけど、穴にはまってしまった時に逆に脱出しづらいタイプなのかなと心配しています。

二宮: 確かに少し優等生すぎる面はあるかもしれませんね。雄星の部屋は、ものすごく整理整頓ができているのですが、その理由について、あるテレビのインタビューで、「部屋の乱れは心の乱れ、心の乱れはコントロールの乱れ」と答えていました。18歳とは思えない返答に「恐れ入ります」という感じでしたよ(笑)。
古田: 僕が出演している番組に出てもらった時も「時間とお金の使い方で人生変わりますから」って言っていました(苦笑)。確かに、一言一言は彼が言っている通りです。そういった発言がイヤミに聞こえないかわいさも彼は持っている。だけど、まずはガムシャラにやってみることも必要ではないかなとアドバイスしたくなりますね。プロは単にスマートなだけでは敵を倒せない。闘争心とかガツガツしたところも求められる世界ですから。

 いい意味での開き直りも必要

二宮: この春のキャンプでスワローズの石川雅規を取材した時に、「古田さんから“シュートを覚えろ”と言われたことが、今になってよく分かった」と語っていました。彼は4勝に終わった2007年にシュートを覚えて、翌年から成績が上がった。石川にシュートを勧めた理由は?
古田: 左右限らず、今のバッターはレベルが高い。たとえば西武の中島(裕之)君なんかは、インコースの内側からバーンとおっつけて右中間にボールを飛ばす。こういうバッティングをされたら、外へ逃げる変化球だけでは対応できません。となると、甘いと思って打ちに行ったら、ちょっと内側へ食い込んでくるボールが必要になる。石川の場合は探究心がある選手なので、常に毎年新しい球種を覚えていたのですが、シュートに取りかかったのは一番遅かった。「先にそれをやれ」って言ったのに(笑)。

二宮: それでも入団から5年連続2ケタ勝利をあげていたから、なかなか本気で習得する気にならなかったのでしょうね。
古田: 確かに勝ってはいたけど、よく左バッターに打たれていましたよ。逃げる球しかないので、極端な話、外中心の勝負になってしまう。彼のボールはそんなに速くないですから、バッターからすればスピードは打ちごろ。よほど、スライダーがビュッビュッと変化すれば別ですけど、逆方向に曲がるものがないと左の強打者に対して作戦を立てようがなかったんです。

二宮: 石川の場合、時間はかかったけど、シュートを覚えて明らかにピッチングの幅が広がりましたよね。決して速いボールはなくても、今やチームのエースになっています。一方で石川入団の翌年、高卒でスワローズ入りした高井雄平は、石川と比べればボールも速くて明らかにいい素質を持っていたのに、ピッチャーでは大成せず、今年から外野へ転向してしまいました。この差はどこから来てしまったのでしょう?
古田: 実は、高井は探究心という点では誰にも負けていないんですよ。本当にすごく練習するし、真面目で勉強もする。暇さえあれば、マウンドに行ってボールを握っているような男です。コントロールが課題と言われてきたから、常にいろんなことを試してやってきたんですよ。

二宮: そんなに研究熱心なのに、うまくいかなかったのはなぜ?
古田: いいヤツなんで、みんなからアドバイスされたことを、全部真に受けてしまうんですよね。そんなことを続けていたらノイローゼになるから、「あんまり、やりすぎるな。オマエの性格からして、やり過ぎるとハマるぞ」と言ったことがあります。でも、彼にとっては、それもひとつの意見として迷う材料になってしまうんです(苦笑)。ちょっと悪いこと言ったかなと、今となっては反省しているんですけど……。

二宮: ただ、バッターとしてみればパワーがあるし、足もある。転向して良かったのかもしれません。
古田: えぇ。ただ、性格はあまり変わっていない。キャンプで会った時も練習のしすぎで手の皮がベロベロに剥けているんですよ。コーチから「人の何倍も打たなアカン」と言われているから熱心にやっている。とはいえ、「確かに人の何倍も打たなアカン、それは分かる。それは分かるけど、それじゃ痛くて打てへんやろ」と……。

二宮: 今の話を聞いていると、プロの世界は真面目で好感が持てるからといって成功するとは限らない。ここが難しいところですよね。
古田: でも、スポーツに限らず、どこの世界も、これは同じじゃないですか。特に我々は数字がモノを言う世界なので、いくら頑張っても結果が出なければクビになる。ほとんどの人間は崖っぷちでプレーしていますよ。だけど、いちいちそんなことを気にして、野球なんてできない。これで打てなかったら2軍に落ちる、なんて思ったら打席でバットなんて出ないですよ。結局、最終的にプロで生き残っている人間はそんなことを考えてないんです。「自分を使った監督、コーチが悪い」といった気持ちをどこかに持っている。

二宮: つまり、いい意味での開き直りが必要だと?
古田: 僕もプロ入りが遅かったので、最初は1年目の開幕から出るぞという気で、カリカリしながらやっていました。特に当時は監督が野村(克也)さんですから、ベンチに座っていると、後ろからいろんなことを言われてしまう(笑)。だけど、それをいちいち気にしていたら、打てもしないし、リードもできない。ある時から「監督があんなこと言うてるけど、知らんわ」と思うようになった。すると意外なことに、自分の中で殻を破れた気がしました。野球って、いろいろな情報を取り入れることも重要ですが、最後はそれを整理してシンプルにすることのほうがもっと重要なんです。そのあたりのバランス感覚を持っている人間が最終的には成功すると思っています。

二宮: 「知らんわ」といっても、最初からアドバイスを拒絶するわけではない。まずは自分で咀嚼して、合うものと合わないものを取捨選択する姿勢が大事なのでしょう。
古田: そうです。最初から受け入れないってヤツもいますけど、それは一番ダメ。とりあえず、どこにヒント隠れてるかわからないから言われたことは全部取り入れてみる。その上で、いらないものは捨てる。いるものだけは磨いていく。

二宮: 今の話は雄星にもしてあげたほうがいいかもしれませんね。
古田: まぁ、彼の場合はこれからですから。人間は1年、2年、3年と経っていくうちに変わっていく生き物。その意味では今後の成長が楽しみですよ。

(後編につづく)
>>「この人と飲みたい」バックナンバーはこちら

<古田敦也(ふるた・あつや)プロフィール>
1965年8月6日、兵庫県出身。川西明峰高、立命館大を経て、トヨタ自動車時代は日本代表としてソウル五輪に出場。銀メダルを獲得する。90年にドラフト2位でヤクルトに入団。91年には捕手としてリーグ初の首位打者を獲得。92年にはチームの14年ぶりリーグ制覇に貢献する。その後も扇の要としてチームを牽引し、計5度のリーグ優勝、4度の日本一に輝いた。06年からは選手兼任で監督に就任。07年限りで現役を引退した。またプロ野球選手会長として、04年の球界再編騒動の際にはストライキを決行。球界縮小の動きを阻止した。現役時代の通算成績は2008試合、2097安打、217本塁打、1009打点、打率.294。MVP2回、ベストナイン9回、ゴールデングラブ賞10回。近著『フルタの方程式』(朝日新聞出版)、『「優柔決断」のすすめ』(PHP新書)が好評発売中。
>>オフィシャルブログはこちら




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(構成:石田洋之)


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