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2010年03月22日

2011年SSに向けての素材考察

「PVは何を発信し、市場は何を求めているのか?」

 2010年2月に開催されたPremiereVisionは11年の春夏に向けてどのような素材の切り口を持つかで、様々な提案がありました。
 90年代の内容やテーマの設定を考えてもこの10年の同展の変わりようにあらためて胸に押し迫るものがあります。
 辛口の意見になりますが、PV展は何度見ても難しかったり、世界のレベルの高さを感じたり、アジアでの日本の存在感の変化を実感したりと複雑なものがあります。
 価格の問題が大きなテーマになっている昨今でありながら、こなれた商品を作っている大ブランドほどPV展に来場していることや、色や素材の方向性や新技術を実際に触れることで情報を自分のものにしているバイヤーやトレンドセッターたちが大勢いることを思うと、この変化は当然のことなのです。
 今回は様々なギャップを考えながら辛口トークをしてみたいと思います。

 素材作りは後加工やブレンドにおける技術の進歩により、天然繊維、化合繊の枠を越えた質感、機能性を生み出した。
 ハイテク素材の域では世界を大きくリードしている日本の素材開発ではあるが、それがそのまま日本のアパレル生産につながるとは一概には言えない。
 産地や素材開発に係わる立場での大きな課題でもある。
 素材展の最高峰であるPV展は毎回最新の情報を世界の業界に向けて発信する役割りを持つ。
 しかしビジターにとって、作ることと売ることのギャップ、さらに現消費者の購買行動を見据えた情報をキャッチすることはかなり高いハードルでもある。
 市場ではユニクロに代表される時代を捉えた感性と研究された機能性、そして価格と新しいビジネス感覚が認知された。
 私自身も大のファンであり、毎日の愛用者である。
 しかし、もの作りを考えるとここに標準をあわせることは難しいし、どこもユニクロである必要もない。
 PVのポイントを4回にわたってご紹介したが、その中で実際の市場や商品企画を予想しての特徴は次の三つに絞って整理したい。
「ノンシャラン」 おおらかで優しさと強さを持ち合わせる新たな自然観。
「フォーマルウエアの改革」 伝統についての再考。守るべきものと変えていくべきもの。中には代替できるものもある。ダイバシティーについて考える。
「シャッフルする」という強い言葉を使ったミックス感やオプティミスティックな考え方。

 この大きなくくりの中に「ノーティカル(海)」も「エスニック」も「クチュール感覚」も「スポーツ」も、それぞれのこだわりを持って新しい目を噴出している。
 次回から市場の素材に目を移していきます。


2009年10月にオープンしたユニクロ・パリ店







2010年03月14日

2011年SS PremiereVision 素材のポイント4

 膨大な情報量を誇るPVですが、そのディレクションやテーマを表すいくつかのくくりをお伝えしてきました。
 最後はここ数シーズン続いておなじみになった「スタイリングに向けた素材」について簡単にまとめました。
 出展するファクトリーの内容とあわせた四つのフォーラムは5,6号館のあちこちに散っています。

1)Seduction ファンシーで流れるような優雅さのある世界
・シルク、ウール、刺繍などに洗いをかけたりマットに仕上げたりしてカジュアルな装いにしたもの。
・綿と麻は気品と繊細さは残しながらもフレッシュでナチュラル感を強調。
・ややプレーンな見え方が毎日着るものやエレガントな中にも欠かせないが、装飾は思い切って施す。
・主としてリラックス感はあるものの、クチュールスタイルのボリューム感のあるバルキールックも大切。









2)Distinction エレガントなフォーマルとテーラードの世界
・エレガントで正調さを失わずに着易くモダンなシティウエアに対応。
・ナチュラル、アーティフィシャル性、化合繊のどれもが巧みにブレンドされる。
・流れるようなラインとテクノロジーで着易さを大切にしたものがダイナミックに表現される。
・あまり無頓着にならずにカジュアルが強調される。
・都会的な装いのためにはシャツが重要。
・このテーマは男女兼用であることが特徴。









3)Relax カジュアルウエア、スポーツウエア、ジーンズウエアの世界
・紳士も婦人もファッション全体にカジュアル化の傾向が進みこのテーマは益々追い風となっている。
・軽さを重んじることがドレスからシャツまで広がっている。
・しなやか、軽い、柔らかいの三原則は織物にも編み物にも共通している。
・天然繊維と合繊のブレンドが着心地のよさを決める。
・プリント、先染めも全体に柔らかくフレッシュアップし、少し埃っぽさを取り入れる。
・ブルーがすべてに存在感を与える。









4)Pulsation スポーツウエア、テクニカルとパフォーマンスの世界
・着ているか否か判らないほどの装い。
・軽さ、しなやかさ。
・肌のように身体が自由に動きかつ実用的。
・フレッシュでファンタジック。
・これらはアクティブスポーツウエア、ランジェリー、水着にも共通する。
・エコフレンドリーであること!
・オーガニックコットンはさらに無害な染色方法が取られ、コーティングや洗い加工も施される。
・有機、ナチュラル
・化学繊維は100%エコのもと、ブレンドされる。






2010年03月06日

21011年SS PremiereVision ポイント(3)

[シーズンのエスプリ]
 今シーズンは凝縮したような新たな紙やガ切り開かれる。
 様々なファッションシーンをシャッフルし、撚りナチュラルでシンプル、さらに明快に構築されたシーズンになる。
 今の状況(現在)から映る軽薄さが夢が秘められたような洒脱な魅力を持ち、気まぐれではあるが、新鮮なエネルギーを感じさせてくれる。
 100%よりブレンド効果を追及することや、真似の出来ないような特性を持ち異なるジャンルやスタイルを連携させる。
 一見不調和のように見える目に見えない特質、緻密な触感が新しい商品を生み出すことにもなる。
 風変わり、驚異的ではあるがリスクをはって有益なこれからの新しい本質を見つけ出す。
 肩の力を抜いたエレガンス志向が強まり、高密度、流動感、魅惑的な質感が求められ、力強く軽快なモーターエンジンのようなシーズンとなる。

[ジェネラルフォーラムでの三つのポイント]

1)Sparkling Nonchalance 才気ほとばしる無頓着さ

  気楽でエネルギッシュなデイウエア
  チャーミングでシンプル 人工的で清潔感のある柄 50年代風
  スポーツウエアに使われる柔軟性のあるコットン
  ストレッチの効いた見せ掛けの無地素材 さわやかツィード
  海のイメージのストライプとひねった色のマイクロチェック
  ダークなバッドボーイスタイル

キーワードと素材

代表するカラーイメージ:黄色
Spruce チェック ストライプ
Tasty flowers レースプリント ファンシーツィード
Gingham offshoots チェック 光り タフタ 玉虫
Sparkling iridescence 玉虫
Meticulous Performation 生地をすうまいか差寝て穴あき処理を施したもの パンチレース メッシュ ネット
Tenderly washed
Vegetal precise ヨコ張り トップ染め ソフト
Sprucely precise 繊細なメッシュ ニット 光り
Today‘s yesteryear ダブル レース 楊柳に箔プリント でも繊細 変形サッカー
Naughty and nice badboy レース 密かな光り 少しとぼけたような豪華さ
Charming scratches レース ジャカード ドビー リボン フリンジ ハチスのようなデニム
Weightlessly puffy ギンガム メッシュ レース
“Bulgomme”volumes 柔らかな厚み 穴もの バルキー 
Rubber sensation 
Naturally joyful 小フリル グラデーション 鉛筆書きのような刺繍 ケミカルレース 変わり織り
Nobly dried






2)Regenerated Tailoring 生まれ変わるフォーマル

  マジメなスタイルにどこかハズ下気分を取り入れる。タブーに揺さぶりをかけ、肩の力を抜きリフレッシュしたカジュアルなエレガンスを目指す。
  軽いコットン、マーセライズ加工のムール、リネンブレンド、ハイブリッド素材などでスーツを。
  ノーアイロンの風合い、マットな顔料加工でカジュアルにアレンジしたシャツを。
  大胆なパターン、プリント、カラーで華やかなフォーマルを。

キーワードと素材

代表するイメージカラー:ブルー
Moving Fluidity ジャージー、とろんとした、膨らみ
大判スカーフ 大柄
Floaty elasticity 
Sheathing stretch
Hidden elasticity
Creamy edidermals マイクロ起毛 デニム 洗い落とし
Dynamic shadows グレー 白 立体的
Virtuously water−proof
Nobly dried ジャージーのサラリ感 麻 サラリとしたレース
City sailors
Amisable curves 大判スカーフ ストライプ
Intensely matt
Delicately greiny 絞りのような凹凸感
Full colour ガーゼのようなデニム 二重織り しっかりしたシャツ地
Free fluidity








3)Cheeky Opulence 生意気な奢れるもの

  ティーンエイジャーの精神 危うさと生意気 挑発と誘惑が一体化したような曖昧さ。
  ストリートカルチャーとクチュールの間 上流の気品と下町のバイタリティー シルクの気取りとグラフィティーのパワー
  これらの相反する要素を大胆に組み合わせる。
  アーティスト集団の活動 線画や色鉛筆の表現 単語や数字のコラージュ
  レース、刺繍、ジャカードと人工素材、プラスティック、ゴム、シリコンなどを結びつける。
  相反するものの中から驚きの触感を作り出す。

キーワードと素材

代表するイメージカラー:オレンジ
Matt−washed
Sluiced witu water 水をかけたような色、プリント
Water Plastics 超極細デニールのポリエステル使い、光り
Mermaid 光沢のあるジャージー 鱗のような光り
Defensive Exception 大柄なジャカード ドビー からみ 薄さ
Reinforced Opulence 透け 光り
Cellulars フクレジャカード スパンコールレース
Natural Artificial レース プリント 超ファンシー
Generous Roundness メンズ調 ソフト 手持ち感のあるダンガリー 張り感 シルクと麻
Impulsive 大柄プリント チェック
Pale Materiality マットな表面 レースのようなレリーフ
Dematerialising Brights パリパリのナイロン コットン素材
Aspirin 水玉 プリントとレース スタッズ ジャカード
Mysterious Abyss 濡れたような光 レース、スパンコール
Watery Crystal
Like a Jellyfish 房(フリンジ) ネット ヒトデ くらげ 光り
Soaked 滲んだプリント
Wet
Ink
Diluted



2010年02月28日

2011SS PVカラーの特徴

 彩度の高いシーズンに開花するために、陰から抜け出して質感を表す色からエネルギーを取り込むことが大切。 
 鮮明な視覚効果で、妨害や衝撃を起こさず、細やかな気配りを持って驚きを与える色が登場する。

光りに満ちた色、薄色、生き生きとした色
動きのある色が輝かしい世界を毅然と描き出す
ビビッドなフローラルカラー
人工的なパステルカラー
カラフルなゼリー色
澄み切った海の色
新鮮なスキンカラー
合成された光りの色

 細部に神経を払い大胆にたくみにカラーで輪郭を取ることや、素材の目付けと色の彩度とのコントラストを熟慮することも重要。
 薄い色には質感を大切にし、鮮やかな色では質感を押さえたような表現。
 後加工や洗い加工をさまざまに駆使して格調の高いマット感を作り出す。

きしむようなマルチカララー
色鮮やかなモノクローム
物憂げなトーンオントーン

 これらをハイブリッド配色で表現し、カラーレンジの画一性を一掃するよう努める。




PV2011SS カラー名
1  silicon(シリコン)
2  marshmallow(マシュマロ)
3  phosphorous(燐光のような)
4  pink beech(ピンクのブナ材)
5  red ceder(赤杉)
6  iroko wood(イロコー熱帯地方の木)
7  peony(シャクヤク)
8  grey shrimp(グレーの海老)
9  fresh brick(れんが)
10 green jelly(グリーンのジェリー)
11 cactus(サボテン)
12 algae(藻)
13 blue tatoo(青の刺青)
14 H2O(水)
15 vitaminC(ビタミンC)
16 vitreous blue(ガラスのようなブルー)
17 bougainvillea(ブーゲンビリア)
18 garlic flower(にんにくの花)
19 orangeade(オレンジエード)


人気カラーについて
 用途別の4つのエリアで各国のバイヤーたちの人気投票が行われている。
 2月9,10,11日の3日間の結果を集計し、期間中の人気のあったカラーの順位を割り出した。
 今回は上位2色(シリコンの白とタトウの青)が殆ど同数で3位を大きく引き離し明確な1位、2位となった。
 次は同得点でピンク系、ベージュ系、ブルー系のクールなパステル3色が並び、少し離れてこれもあまり差の無い6,7,8位にマットで優しいサボテン、ビビッドなビタミンオレンジ、芍薬のピンクが一群を作っている。
 さらにこれらに光りが当たり、濡れたような表現や練りこまれたような光沢が加わる。

2010年02月21日

2011年SS Premiere Vision ポイント(1)

 今シーズンの開催は雪のために交通機関の遅延や寒さから思わぬ番狂わせもありましたが、エネルギッシュ、楽天的のムードがカラフルで潔い色とともに来春夏に向けての明るい希望を感じさせました。
 会場の印象を手短にお伝えします。



(カラー)
 19色のカラー提案のうち最も重要なのはフレッシュさを感じさせる色。
 同時に絞り込まれた色を組み合わせることによって多層の色合いを感じさせる。
 酸っぱみ、透明感、光り感に加えて濡れたような色の表現が新鮮。
 蛍光色の反射よりも光りを受け止めながらさらに内側から光りを放っているような色合いでもある。

 洗ったようなインディゴブルーから緑みを含んだターコイズなど、青、緑はどちらも夏の色として重要。
 会場では赤やオレンジ、黄、フーシャピンクなどの華やかな色も目立つが、しっとりとしたミルキーパステルの人気も高い。

(素材)
 ジェネラルフォーラム及び最終用途を意識した四つのフォーラム(Seduction,Distinction,Pulsation,Relaxation)では各々の目的、主張を持った素材提案がなされているが共通したポイントは次の通り。

○ 超軽量のテクニカル素材
○繊細な多層素材
○エコを感じさせる素材、リサイクル合繊
○ナチュラルを表す麻の活躍 粒粒感や未加工感
○ウール/綿 ビスコース、シルクなどのミックス 特に麻とウール、綿、シルク混素材
○練りこんだような光沢
○洗った色、水を通したような色とその風合い
○しなやかな軽さ、ソフトタッチはリヨセル、ビスコース、綿、麻などの混紡
○流動感のあるデニム(軽い) インディゴ風素材
○クリームのような滑らかさのある表面感
○光沢@ 濡れたような表面 water crystal
○光沢A セロファンヤーン パーリー メタリック加工
○高密度再び シルキープリント
○マットな見え方、でもオチ感がある バスケット織り
○マドラスチェック ギンガムチェック
○海辺のモチーフ
○ジャングル カムフラージュ 蝶の柄
○エスニック調
○オプティミスティック柄 (水玉や花で)
○抽象 アート ぼんやり 色のぶつかり

















 写真は4つのフォーラムとインディゴ展によるプリントの傾向、柄のイメージです。
 市場性の最も高い花や幾何柄のほかに抽象的、神秘的、シンボリックなアニメーションタッチ、シンプルで分かり易い柄が見られました。
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