【第119回】 2010年03月25日
生方副幹事長解任という“誤報”で得をしたのは誰か?
その理由は、これらすべてが、独裁的な小沢幹事長による仕業だという先入観によって陥ったミスに他ならない。いつもの「小沢神話」による思考停止が取材の際の謙虚さを忘れさせてしまったのだろうか。
とはいえ、そこは記者クラブメディアである。こうしたマッチポンプの「空騒ぎ」への対処法も巧妙に用意していた。
鳩山首相が副幹事長人事で
小沢氏に口出しできるか?
生方副幹事長の留任を確認した火曜日、新聞やテレビは次のような報道で自らのミスを取り繕ったのである。
〈生方副幹事長は一度「解任」されたが、小沢幹事長が翻意して「留任」を求めることに決めた。その背景には週末の世論調査などで民主党の支持が落ち込んでいること、また鳩山首相から小沢幹事長への指示もあり、一転、、生方副幹事長の留任を決めた〉
不思議なこともあるものだ。
新聞・テレビによれば、民主党は一貫して、小沢氏の独裁体制下にあり、鳩山首相ですらその意向には逆らうことはできない、と報じて続けていた。
ところが、テレビ新聞によると、たった一夜にして鳩山首相の権力は回復し、小沢幹事長の専任人事権の「副幹事長」人事に口出しできるようになったのだ。
残念ながら、筆者の取材では、鳩山首相が副幹事長人事について小沢幹事長に命令した事実は確認できなかった。
鈴木宗男新党大地代表は自身のブログの中で次のように語っている。
〈小沢幹事長は生方氏に対して副幹事長を辞めろと言っていないのに、一方的に小沢幹事長を批判する様な話は、子供じみている。小沢幹事長と生方副幹事長は、肩書、ポスト以上に人間的に大きな差がある。
生方副幹事長は、小沢幹事長の広い心に救われたことを忘れず、これから仕事でしっかり返すべきであると思うのは、一人私だけではないだろう〉(「ムネオ日記」)
http://www.muneo.gr.jp/html/page001.html
結局、この週末、新聞・テレビが盛んに報じたこのニュースはなんだったのか? 結果としてのこの「誤報」で得したのは誰か?
今こそ「小沢独裁」を許さないために、記者クラブメディアは自己の検証報道が必要ではないだろうか。
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著者プロフィール
- 上杉隆
(ジャーナリスト)
1968年福岡県生まれ。都留文科大学卒業。テレビ局、衆議院議員公設秘書、ニューヨーク・タイムズ東京支局取材記者などを経て、フリージャーナリストに。「宰相不在 崩壊する政治とメディアを読み解く」「世襲議員のからくり」「ジャーナリズム崩壊」「官邸崩壊 安倍政権迷走の一年」など著書多数。最新刊は「民主党政権は日本をどう変えるのか」(飛鳥新社)。
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