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日韓歴史研究 検証は未来友好のために2010年3月25日  このエントリーを含むはてなブックマーク Yahoo!ブックマークに登録 twitterに投稿する

 日韓両国の有識者でつくる「第2期日韓歴史共同研究委員会」の報告書が発表された。
 新設された教科書小グループで韓国側が日本側の研究に一定の評価を示すなどの成果を得たが、領土問題や日本の植民地時代の問題などで今回も双方の隔たりは大きかった。これからも共同研究を継続し、双方の溝を埋めていく努力が求められる。
 隣国同士の日本と韓国は古くから歴史を共有してきた。その間、7世紀の白村江の戦いや元寇(げんこう)、豊臣秀吉の朝鮮出兵、1910年の日韓併合、第2次世界大戦など不幸な対立があったのは事実だ。
 しかし、歴史の真実は一つである。今後もさらなる真実、史実の検証が必要だ。
 今後の共同研究継続について、日本側委員の木村幹・神戸大大学院教授は「一方の歴史観のみを他方に押しつければ無用な紛争を引き起こす」と語る。韓国側委員の金度亨・延世大教授の「歴史認識を接近させなければ両国の未来を平和的につくっていけない」との指摘にもうなずける。
 共同研究の場はあくまでも事実を検証する場であり、互いにイデオロギーを主張する場ではないからだ。歴史的事象を双方から検証し、認識を一致させていくことが将来の両国友好につながるのは言うまでもない。
 日韓両政府が合意して共同研究がスタートしたのは「新しい歴史教科書をつくる会」メンバーが執筆した歴史教科書が2001年の検定に合格し、「植民地支配を美化している」と韓国が反発したことが背景にある。今後は、研究成果をどう両国の教科書に生かしていくのかも課題になってくる。
 韓国の歴史に起因する反日感情は払拭(ふっしょく)されたわけではないが、一時期に比べて穏やかになってきている。歴史認識の一致した教科書が日韓双方で出版されれば、その意義は大きい。
 敵対した歴史を持つ隣国同士が戦後史を扱った高校の歴史教科書を共同編集したドイツとフランスの例もある。次代を担う子どもたちには歴史認識での対立や相互不信を抱かせたくない。
 日韓共同研究委員会は、さらに歴史認識のそごの解消を図るとともに、両国の友好関係を深めるための方策についても知恵と良識を発揮してほしい。


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