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小比類巻引退「蹴り」も「走り」もできず

: 神妙な面持ちで引退を発表する小比類巻（右）と谷川ＥＰ

　Ｋ－１中量級のＭＡＸで日本勢のエース格だった小比類巻太信（３２＝ＢＲＡＶＩ　ＲＡＧＡＺＺＩ）が２３日、突然の現役引退を発表した。２７日の「ＷＯＲＬＤ　ＭＡＸ日本代表決定トーナメント」（さいたまコミュニティアリーナ）を前にした練習で、古傷の右股（こ）関節痛を再発させ、走れなくなるほど悪化した。今回を最後と決めていた大会への出場を断念し、そのままリングを去る決意をした。今後については白紙。小比類巻の代わりには、名城裕司（Ｋ－ＮＥＴＷＯＲＫ国士会館）が出場する。

　驚異的な練習で自分を追い込んできた「ミスター・ストイック」も、けがを乗り越えることはできなかった。都内のホテルで急きょ開かれた記者会見に、小比類巻はスーツ姿で登場。神妙な面持ちで、覚悟を決めたようにマイクを握った。

　小比類巻　多くの人に謝りたいと思います。今後は現役を続けることも考えたが、引退を考えたいと思う。たくさんご迷惑をかけ、申し訳ありませんでした。今後、体と話し合って引退試合（をするかどうか）を決めたい。

　突然の引退宣言だった。２７日のトーナメント（対長島☆自演乙☆雄一郎）に向けて調整に入っていたさなか、身に覚えのある激痛が走った。２年前の同大会を前にした練習で痛めた股関節が、再び悲鳴を上げた。神経を直接、圧迫するような痛みで、蹴りを出すことさえできなくなった。「パンチだけで試合に出ようとも考えた」が、走ることもできず、５キロの減量が不可能と判断した。「今年で最後」と決めていた大会への出場がかなわず、世界王者の夢も消滅。闘争心が切れた３２歳に、もう１年を待つ気力はなかった。

　魔裟斗と並ぶ、Ｋ－１中量級の雄だった。３度の日本代表決定トーナメント優勝は、魔裟斗を上回る歴代最多。実力と渋いルックスを兼ね備え、格闘技に無関心だった多くの女性ファンも引き込んだ。一方で、現役生活はけがの連続だった。０８年の同大会など、試合直前のけがで過去に２度も出場をドタキャン。会見に同席した谷川貞治イベントプロデューサーは、功績をたたえつつも「プロとして、３度のドタキャンはどうか」と苦言を呈した。

　衝動的な決断だったようで、小比類巻は今後について「考えていない。頭の中が…」とだけ話した。昨年は魔裟斗、武田幸三、重量級の武蔵と３人の大物日本人が引退。また１人、草創期を支えたファイターが去り、Ｋ－１は過渡期に差し掛かった。【森本隆】

　［2010年3月24日10時56分　紙面から］