サムスン「封印された成長秘話」液晶テレビでナンバー1シェア。ソニー、
パナソニックも勝てない世界企業の秘密に迫る

2010年03月20日(土) FRIDAY
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■李健煕氏の生活と素顔■

<李健煕は(系列会社の)社長団会議で「私には大きな弱点がある。生活費を稼ぐために、または月給をもらうために仕事をする人の気持ちをよく分からないということだ」と言ったことがある。
  正直な告白だ。彼は朝、出勤して夕方に帰宅する生活をしていない。彼の生活習慣はとても独特なのだが、主に自宅にいて録画しておいた番組を何日もかけて観る。鏡を見る癖(執務室などで常に鏡を隣において覗き込んでいる)がある。彼は自分の身体で実験するのも好きだ。例えば、食事を食べないで何日耐えられるか、という実験だ>

■会議前に役員が気をつけること■

<李健煕の会議は長く、時には6時間を超えることもあった。李健煕は不思議なことに、いくら会議が長引いても一度もトイレに立たない。役員たちは会議がある日は、朝から水はもちろん、スープなどの水分をいっさい摂らなかった>

■監視チームによる不正調査■

<監視チームはサムスンの全系列社を対象に年中監視をするのだが、1社にだいたい2ヵ月かかる。監視チームには金融系列、電子関係、電子以外の関連企業などに区分された監視支援チームという下部組織があり、また各系列社内にも監視チームがある>

<監視チームが、ある役員を追い出そうとした場合、いくらでも実現できる。過去5年間、対象の役員と一緒に仕事をした上司、同僚、部下にファックスを送り、その役員について知っているすべての不正を書いて提出するよう指示する。
  ファックスを受け取った人は、会社がその役員を追い出すつもりであることを悟り、役員がよく行く酒場や仲の良いホステスなど、知っているすべての事実を書いて提出する。このくらい徹底すれば不正の一つや二つは必ず見つかる。ファックスを送って30分もあれば、ことは終了する>

(※日本サムスンは、金氏の著書について「コメントは差し控える」としつつも、「金氏がどんな人物であるのか確認したうえで記事を掲載してほしい」とした。一方、金氏は本誌の取材に、「コメントは差し控えたい」としている)

*      *

 金氏の著書で描かれたサムスンという企業の一断面が事実ならば、相当特殊な企業風土だと言わざるを得ない。だが、それを差し引いても、サムスンに日本のメーカーが失った、モノづくりや商売のダイナミズムを感じるのも事実だ。

 目標を定めたら「ヒト・モノ・カネ」を集中投資し、世界一を目指して突っ走る―。こうした底力を持つ日本企業が、今どれほど残っているだろうか。巨大同族企業サムスンから、この先も目が離せない。

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