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言論封殺の「暗黒政治」批判者を更迭、提訴、封じ込め
民主党の小さすぎる"ケツの穴"
(週刊朝日 2010年04月02日号掲載) 2010年3月24日(水)配信
ところが、何を虚偽と言っているかというと、首をかしげざるを得ない。例えば、鳩山政権下の地球温暖化問題の会議が「福山氏の独壇場だと評判だ」と論評したこと、25%削減のために「多額の負担を強いられる国民への配慮は見られない」と評したことなどを、「虚偽だ」としているのだ。
ジャーナリストが取材に基づいて、国の政策や政治家に対する自分の考えを表明したことが、なぜ虚偽だというのだろうか。しかも、与党政治家で副大臣の福山氏なら、記者会見をはじめ、反論の機会はいくらでもある。それを言論ではなく、裁判に持ち込む。これでは、批判を封殺するための訴訟だと言われても仕方がない。
これには民主党内ですら、
「言葉は悪いですが、なんて“ケツの穴”の小さいヤツなんだとしか言いようがない」(民主党中堅議員)
との声が上がるほどだ。
ちなみに米国では、公人に対する名誉棄損が成立するのは極めて限られた場合だ。日本でも、国民の知る権利を担保する「報道の自由」はあらゆる権利の中で優越するとされている。
前出の屋山氏もあきれる。
「25%削減に驚く人は大勢いる。それを『失敗』と書かれ、名誉棄損だ、虚偽だと言うなんて、独善でしかない。政治家なら、どういう目で世の中から見られようが、潔く受けなければならない。自分の業績を褒めたたえた記事しか認めないということなのでしょう。ジャーナリズムをまったく理解していない」
筆者らの経験でも、最近は、小沢氏の政治とカネの問題や独裁ぶりなど、民主党の問題点を同党議員に取材すると、匿名でもコメントを拒否する議員が大多数だ。多くの議員が実名で執行部批判をしていた野党時代と比べ、隔世の感がある。
「匿名でも、自分の発言とばれるかもしれない。そしたら冷や飯を食わされる」
という議員心理が病的に広がっているのだ。さらに、官僚取材でも、民主党に批判的な意見を聞いた後、
「○○省幹部が語ったという表現はやめてほしい」
と懇願されるケースも相次いでいる。自民党政権下ですらなかった現象だ。その理由を、主要官庁の局長の一人はこう語る。
「今の政権では、必ず犯人捜しが始まり、下手をするとクビになるから」
情報公開や自由闊達な議論、政策決定の透明化。かつては党の売りだった主義を守る姿勢を忘れ、批判を許容する度量を失いつつある党が、国民に愛想をつかされる日はそう遠くない。
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