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大泉光一『支倉常長慶長遣欧使節の真相 肖像画に秘められた実像』・『メキシコの大地に消えた侍たち』

● 支倉常長と慶長遣欧使節について考察を加えた興味深い一冊。と同時に、伊達家捏造の構図にメスを入れた本でもあります。

 では本書よりまとめ。

・宣教師ソテロの口車にのせられた政宗、派遣を決定。罪人の子・支倉常長を選んだのは「どのみち死んだようなもの、生きようが死のうがどうでもいい」から
・この当時は幕府は諸藩に普請など経済負担を敢えてかけており、財政的余裕はどこにもなかった。だけど政宗はこの可能性の低い大ばくちにのった。底は割られているのに……
・政宗の意図は幕府には実はわかっていたが、確固たる証拠がないので泳がせていた
・そのへんを柳生宗矩につっこまれた政宗「いやあ、そんなことないですよ! がんがん切支丹殺しますから」と返事をするも、しばらくは迫害せず放置
・切支丹禁令が出たが、それでも支倉には連絡せず放置。「いっそ客死したらラッキーなんだけど」と考えていたようだ
・政宗はソテロフィルターで知らなかったが、欧米各地はすでに日本の切支丹迫害を知っていて冷淡な対応を支倉らにとった。メキシコで引き返すことが検討されたほど
・支倉らは食べ物にすら困るほど現地で苦しむ。悲惨な旅路。餓えや病で倒れるものも続出
・戻って来た支倉は謎の死を遂げる。抹殺か?
・支倉の親族も多数受難
・関係書類等は幕府をおそれた政宗らが大部分を破棄、さらに仙台藩で増えていた切支丹は根こそぎ弾圧・処刑された

 明治以降。
・朝廷の汚名をなんとかしたいと考えた旧仙台藩士、使節に注目しPR開始。政府の海外進出・移民推進の意図と一致したため利用される。悲運の使節一転、"栄光"の使節に
・仙台藩から宮城県にうつされた支倉の見聞録十八冊が、何者かによって持ち去られ消える(仙台藩士の犯行か?)
・支倉常長の肖像画、日本武士像等が謎の加筆修正を行われる

 いや……まあその、全然この使節はいい話でも壮挙でもないと思っていました。しかしここまで無責任で悲惨なものだったとは。そしてそれ以上に、後半部の捏造の手口には驚きました! なんでそこまでするかという以上に、あまりにやることが稚拙。ホント本書は読んで下さいよ、びっくりする。保証します、ほんとうにびっくりする。当時の基準からみたらありえない衣装、指輪、装飾品を加筆しているうえに、こけた頬のかげを不自然なまでに長いもみあげに描きかえたりしているという……その理由は「もとのままだと貧相で苦労してきたように見えるから」ではないかと。

 ある意味江戸期に闇に葬られてきたことより、明治以降の捏造まみれの持ち上げのほうが、不幸な気がします。嘘はいつかばれる。もう筆者はばらしちゃってる。

 あと常長たち使節団が上陸したというスペインの一地方、コリア=デル=リオには「JAPON(ハポン)」という日本を意味する苗字をもつ人たちが600人居住しているそうですが、これもまた「支倉一行の子孫」とは諸説あって特定できません。
 メキシコなどの地に残った彼らも、決して平板な人生は送れませんでした。彼らはむろん、その子らまで人種差別の中で苦しんで生きることになりました。

 そういう負の側面を無視して天下を虎視眈々とねらった策略、ねえ……。結果論がすべてじゃないけどさ、そもそも発端が博打としか思えないしなあ。政宗って、小田原前といいこのときといい、自分に有利な情報を疑いもせずまんま受け取るんだな。その結果軽挙妄動としか思えないことをやらかして、自分だけ助かって他人を不幸のどん底におとしこむのね。なんてポジティブシンキング、でも私は真似したくない。

 思えば政宗は葛西大崎一揆煽動、和賀一揆煽動、そしてこの慶長遣欧使節と三回も同じようなことをしているんですよね。あとカネの使い方も無茶苦茶。こんな底の浅い謀略をかます一方で遊蕩三昧し「幕府の目を誤魔化すためだ!」と言い放つなんてもうどうなっているんだ……。こんな底の浅さを「天下を虎視眈々と狙い続けた! カッコイイ」とかもうどうなっているんだホント。
 それにだいたい遣欧使節の意図は幕府にだだ漏れていた。つまり、幕府は本気で政宗をおそれていたわけじゃないんだろうな。

 十年後、伊達政宗の評価はどうなっているんでしょう。今がピークでこれからは下がるだけだと思いますが、ちょっと楽しみです。

支倉常長 慶長遣欧使節の真相―肖像画に秘められた実像支倉常長 慶長遣欧使節の真相―肖像画に秘められた実像
(2005/10)
大泉 光一

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メキシコの大地に消えた侍たち―伊達藩士・福地蔵人とその一族の盛衰メキシコの大地に消えた侍たち―伊達藩士・福地蔵人とその一族の盛衰
(2004/05)
大泉 光一

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吉梨(きつり)

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ただいまお疲れ中。戦国時代なんか大嫌いだ。