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課題の深層:’10名張市長選を前に/上 地域医療 /三重

 ◇救急搬送、4病院「ノー」 医師不足著しく

 名張市長選が28日告示される。現職の亀井利克氏(58)と、新人で元国交省近畿運輸局次長の辻安治氏(52)が立候補を表明している。次期市長には、危機的状況にある救急輪番制や財政難などの問題解決が求められる。告示を前に、課題の深層を探った。【宮地佳那子】

 2月末の夜、名張市の40代女性は一緒にいた友人女性の突然の発作、手足の震えに救急車を呼んだ。すぐ到着したが、その日の2次救急輪番病院に受け入れが断られ、搬送先が決まらず、約30分も止まっていた。救急隊員に「なんとかしてよ」と思わず叫んだ。

 女性は「何軒か病院に電話していたみたい。救急隊員に怒りをぶつけたのは悪かったけど、その時は必死だった」と話す。結局、津市の病院に搬送された。友人は過呼吸で命に別条はなかったが、「他県での妊婦のたらい回しは聞いていたけど自分の町でもこんなことがあるなんて。いつ我が身に降りかかるかわからない」と不安がる。

 名張市栄町の無職、井上征紀さん(70)も深刻な経験をした。昨年4月の深夜、腹部に激しい痛みを感じ眠れず、翌朝午前9時の診察開始とともに近くの開業医に駆け込んだ。診断は急性胆のう炎。医師は「いつ、胆のうが破裂するかわからない。すぐに手術ができる病院に入院しないと大変なことになる」と告げた。

 医師は井上さんの目の前で、伊賀地域で設備の整った名張市立、伊賀市立上野総合市民など4病院に電話をした。しかし電話口ですべて「ノー」。ベッドが空いていないなどの理由だったという。

 伊賀地域をあきらめ、幸い奈良県の病院に空きを発見。即日入院し、手術後の5月末に退院した。井上さんは「財政難も医師不足もわかる。しかし患者はその時になったら、どうのこうの言っていられない」と訴える。

 名張市消防本部では、1日平均7、8回の救急搬送要請があり、救急車5台がすべて出動することもある。長谷川良行・警備第1室長(55)は「受け入れ先が決まらず、1時間以上現場にいることもある」と話す。患者をなだめながら、20以上の病院に電話したことも。大阪方面まで搬送するケースもある。

 しかし、救急搬送要請のうち、軽症者は約6割を占める。市は応急診療所の利用や、開業医への相談を薦めるが、井上さんは開業医の診察を受けるにも2時間待ち、「市は開業医に頼らずにきちんと対応して」と訴える。一方で、名張市立の医師は28人(02年)から、現在24人に減るなど伊賀地域の医師不足は著しく、時に36時間連続勤務する勤務医の疲弊も深刻だ。

 08年から続く輪番制が危機的な状況のなか、亀井氏は「公立病院で機能分担し、救急医療を担う急性期病院に医師を集める」、辻氏は「名張市立病院単独での救急医療を目指す」と主張する。市民が安心できる医療体制を、一刻も早く作らねばならない。

〔伊賀版〕

毎日新聞 2010年3月24日 地方版

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