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■オバマ政権、WTOへの提訴模索
「検閲の撤廃という約束をどうしたら果たせるのか模索してきたが、難しかった」
グーグルのデビッド・ドラモンド最高法務責任者は22日、中国撤退を表明した声明で、こう説明した。
グーグルにとっては今後の成長に水を差しかねない決断だ。世界最大手とはいえ、中国では地元の「バイドゥ(百度)」に検索シェアで大きく離されていた。裏を返せば、中国は成長の伸びしろが大きい市場のはずだった。だからこそグーグルは、検索事業以外では中国にとどまることを強調した。
グーグルに追随し、中国政府に表だって抵抗しようとした米企業は今のところない。中国市場の魅力を重視しているためとみられる。ただ、中国の強硬姿勢があらわになったことで、企業イメージを曲げずに中国とぶつかる事例が今後出てくる可能性はある。
米ホワイトハウス国家安全保障会議のチャン副報道官は22日、「我々はインターネットの自由を支持し、検閲に反対する。表現の自由と情報アクセスの自由は国際的に認められた権利だ」と、意義付けを強調した。
イランなどの強権国家で民主化を促す手段となりうる「ネットの自由」は、オバマ外交の金看板だ。クリントン国務長官は1月の演説で中国を名指しし、「検閲はどんな企業でも、どこからでも、いかなる方法でも受け入れられるべきではない」と述べ、中国に検閲中止を求めた。
米国内ではグーグル擁護の声が強い。オバマ政権は「ネット検閲は不公正な貿易障壁に当たる可能性がある」として世界貿易機関(WTO)への提訴を検討中。実際に踏み切るかどうかが次の焦点だ。
一方、1月以降、台湾への武器売却決定や、チベット仏教最高指導者ダライ・ラマ14世とオバマ大統領との会談で悪化した対中関係の立て直しも急務だ。国務省のクローリー次官補は22日、「グーグルのビジネス上の決定で、我々は当事者ではない」と中国を刺激したくない思いもにじませた。5月に開かれる閣僚級の米中戦略・経済対話や、米中人権対話といった場で軟着陸を探る可能性もある。(北京=峯村健司、ニューヨーク=丸石伸一、ワシントン=村山祐介)