「館長雇止め・バックラッシュ裁判」は5月22日、大阪高裁での口頭弁論を以って結審しました。この日、判決日は言い渡されず、いつ判決が出されるかは未定です。
この裁判は、豊中市の男女共同参画推進センター「すてっぷ」の公募館長だった三井マリ子さん(非常勤)が、男女平等推進に反対するバックラッシュ勢力に屈した市当局と財団により、「組織体制変更」を口実に2003年度末で雇止めにされたうえ、茶番の面接で新規に設置された常勤館長への採用も拒否されたとして訴えていたものです。
長岡弁護士、三井さん、大野弁護士、川西弁護士、島尾弁護士、寺沢弁護士、宮地弁護士(大阪弁護士会館、提供:ファイトバックの会)
一審は、豊中市による情報隠しなどに不当な面があったことを認めながらも、「損害賠償をするほどではない」と原告の訴えを却下し、原告が控訴していたものです。控訴審では、豊中市が館長である三井さんの当然知るべき重要な情報を隠したり、虚偽情報を伝えたりして、三井さんの人格権を侵害し、職場環境保持義務違反を行ったと、主張しています。職場環境保持義務とは、労働者が人格を尊重されながら職場で働くことができるように職場環境を保持することは使用者の義務だ、ということです。
結審までに次のようなやりとりがありました。
一審で、非常勤から常勤に変わるという組織体制変更に関わる予算は、理事会で確定しないと予算案に上げられないため「現行のまま」記載したと、豊中市は言ってきました。すてっぷ職員は、現行のまま、つまり三井さんが非常勤館長のままいるという予算案をずっと見せられていたわけです。そして、常勤館長への移行を決めた2004年2月1日の臨時理事会の後に、2004年度予算案を確保し、それを市に知らせたとしていました。
しかし、控訴審で市側は、一審での主張を覆し、既に2003年10月中旬に市長に話をして予算の確保をした、と主張しだしました。それなら速やかに理事会を開いたらよかったのに、年度末が迫った2004年2月1日まで理事会をひっぱりました。すてっぷ職員の採用は原則公募と決められているのですが、最終的には、「公募の時間がない」という話にして、(茶番の)選考に決めてしまったのです。「『公募では間に合わない時期』に理事会を開くのが狙いだった」と、三井さん側は主張しています。
この2月1日の理事会については、2004年4月1日の体制変更実施・3月末の三井館長雇止めについて、その1、2ヵ月前にはじめて提案したことじたい、「本件体制変更・雇止めの異常性を物語っている」と、三井さん側は主張しています。私が勤務する広島県でも、2008年の夏に決まった地方機関の組織体制変更を、2009年4月から実施したのですが結構大変でした。ましてや、2月に初めて提案した上、そこで審議・決定して4月実施、などというのは無謀極まりないことです。市がそこまで無謀な事をなぜしたか、という疑念を強く感じます。
参加者の質問に耳を傾ける弁護団(提供同上)
財団は一民間法人であり、組織変更のような重要な問題は、まず事務局職員間で話し合うべきです。しかし、事務局の館長が、いっさいの情報を秘匿されていました。結審に提出された準備書面で、以下のような事実も明らかにされました。
2004年1月10日、不審に思いはじめた三井さんは、組織変更案を出すよう、山本事務局長に要求しました。事務局長が出した組織変更案は、わずか3枚の総論部分のみでした。ところが、その3枚は、頁番号のナンバリングが1/9〜3/9とふられており、9枚つづり書類の一部であることに三井さんは気づきます。そこで、翌日、残り6枚を出すよう要求したところ、事務局長は「これで全部」と4枚を出します。まだ2枚足りません。残り2枚を要求した三井さんに対して、事務局長は「私の立場では見せられません」などと拒否し、ついに全部は見せなかったのです。
これは、総論部分に加え具体的な職員移動図が書かれた各論部分(雇止めされる人と年度がわかる)ができていたにも関わらず、三井さんに隠し通したことを意味します。組織変更案の具体的内容を徹底して隠した豊中市らの行為は、「人間としての尊厳を傷つけ人格権侵害行為」であり違法だ、と断じました。三井さんは、法廷後の交流会で「職を失うことは命にかかわること。医療界のようなインフォームド・コンセントをとって当然だ」と、人間を人間として扱う際の最低限のルールを守らなかった豊中市に憤りをあらわにしました。
市側は「すてっぷは組織体制変更後、盛んになっている」と数字まであげて強弁しました。これに対して、すてっぷに国際交流センターを移転させ、すてっぷを縮小させることを取り上げ、「男女共同参画活動が本当に盛んになっているならリストラの対象にはしない」と三井さん側は反論しました。
参照:
不信の声相次ぐ 「すてっぷ」への国際交流センター移転問題説明会
新型インフルエンザ大流行にも関わらず大阪に駆けつけた皆さん(同上)
豊中市は、「バックラッシュに毅然と対処した」ということを通すため、三井さんに対してバックラッシュ勢力にお詫び行脚するようにと言ったことはない、としてきました。しかし、三井さん側が新たに証拠として出し山本事務局長のメモには、三井館長が謝罪するよう北川悟司議員(当時)から要求された部長が、会議で三井館長の謝罪を決めたことが書かれており、豊中市の嘘が明らかになりました。
この北川前議員が代表だった「教育再生地方議員百人と市民の会」の事務局長が増木重夫さんです。2002年から2003年にかけて、すてっぷや三井さんに対して嫌がらせを行なった人物です。4月4日、増木重夫被告人は、小学校校長を脅したとして「暴力行為法違反」で逮捕されました。増木被告人は、逮捕直前には防衛大学校の校長宅にまで押しかけ、街宣を行なったりしています。
参照:
<地元・西宮市民へ訴える!五百旗頭 真防大校長の罷免を>
増木被告人が関西で支部長を務める「主権回復を目指す会」の西村修平さんらは、東京都東村山市東村山駅前で9月1日に行なった街宣の中で、創価学会員でもない人を「学会員だ」などと非難し、民事提訴されています。その街宣中、創価学会と関係ない駅近くの小さなお店に「表敬訪問」と称して、大人数で国旗などを掲げて押し寄せ「創価学会出て来い」などと罵声を浴びせる事件も起こしました。
参照:
【実況】瀬戸一派による洋品店襲撃の一部始終【転載歓迎】
西村さんらは、今春の防衛大学校卒業式にも押しかけ、「ミサイル発射用意!目標、麻生総理大臣!撃て!」と叫んでいました。
参照:
防大学卒業式 国賊・五百旗頭 真に天誅を!国防の急務は五百旗頭 真防大校長の罷免 防衛大を反日・媚中の校長から守れ!
こうした行動を行ってきた人々の圧力に屈してしまい、三井さんの人格を踏みにじってまで強引に組織体制を変更した豊中市の誤りに、どう高裁が判断をするか、注目されます。