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病院領収書:治療明細を記載 来月から原則、全施設で

 病院などの医療機関で治療を受けた際に窓口でもらえる領収書が、4月から大幅に充実する。これまで書かれていなかった詳しい検査内容や薬の正式名称と、それぞれの診療報酬の点数が明記されるのだ。こうした医療情報の透明化は、大阪の市民団体や薬害被害者らの長年の運動の成果だ。【野田武】

 健康保険制度に基づく医療は、検査や手術の内容ごとに「診療報酬点数表」が細かく決められている。診療報酬は1点につき10円。医療機関は点数表をもとに患者ごとに医療費を計算。実施した医療行為と投薬量などを明記したレセプト(診療報酬明細書)を作って、健康保険組合へ請求する。うち一部は患者本人(被保険者)が窓口で支払う。だが、そのときにもらえる領収書は「投薬料」「検査料」など項目ごとの診療報酬点数しか分からない。

 これに対し、レセプトはより詳細で、買い物でもらえるレシートのようなもの。レシートには普通、「トマト 1個 90円」というように商品名と個数、値段が並ぶ。同じようにレセプトにも検査・薬品名、診療報酬点数が記載されている。

 97年まで旧厚生省は「患者に告知していない病気を知らせてしまう恐れがある」「医師のプライバシーにかかわる情報も含まれる」などを理由に、健保組合や自治体などに対し、レセプトを患者に見せないよう指導していた。97年以降は、請求すれば開示されるようになったが、一般には知られていない。

 今でも請求しても開示されないケースがある。神奈川県内の女性(35)は、治療に疑問を持ち、自宅のある市へ昨年、レセプト開示を請求した。ところが「今後の治療に支障をきたす」と拒否された。女性は市民団体「医療情報の公開・開示を求める市民の会」(事務局・大阪市)へ相談。同会が市と交渉し、今年になって開示された。「すぐ開示されると思ったのに、理不尽な理由で拒否された」と女性は話す。4月からは領収書にレセプト並みの情報が記載され、苦労をしなくても見られるようになる。

 ◇自分の病気、知っておこう--情報開示求めてきた大阪の市民団体

 レセプト開示を求めて長年、活動してきた大阪府立牧野高校(枚方市)の教諭、勝村久司さん(48)は、レセプト並み領収書の病院窓口での無料発行について、「医療の情報開示という点で、レセプトは原点。実現した意味は大きい」と強調する。

 勝村さんは90年、枚方市の枚方市民病院に入院中の妻が陣痛促進剤を投与され、仮死状態で生まれた長女・星子ちゃんを生後9日目に亡くした。市を相手に起こした裁判の証拠とするためレセプトを手に入れようとしたが、プライバシー侵害や目的外使用との理由で開示されなかった。93年、他の薬害被害者たちと旧厚生省へ交渉し、レセプト開示要求を始めた。96年には「市民の会」も設立。その結果、国も97年にレセプト開示へと方針転換した。

 こうした活動に注目した連合から05年、診療報酬の改定について審議・答申する厚生労働相の諮問機関「中央社会保険医療協議会」の委員に推薦され、就任。請求しなくても窓口でレセプト並み領収書をもらえるよう訴え続けた結果、08年から全国8カ所の国立高度専門医療センターが無料発行するようになった。翌年には国立病院機構の病院にも広がり、今回の原則全医療機関での発行につながった(レセプト請求が電子化されていない一部病院を除く)。

 勝村さんは「自分の病気に関する薬や治療の名称は知っておいた方がいい。領収書を保管しておけば調べる手がかりになる」と助言。さらにこう願っている。「これからは領収書を見て『何でこの治療がこんなに高いの?』と思ったら、ぜひ声を上げてほしい。医療費が普通の人の価値観に合うようになれば、いい医療になっていくと思う」

毎日新聞 2010年3月24日 東京朝刊

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