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きょうの社説 2010年3月24日
◎高卒の内定率上昇 成果挙げた支援策は充実を
雇用情勢が厳しいなかでも、石川県内の公立高卒業者の就職内定率が96・9%(今月
18日段階)と昨年度末(97・3%)の状況に近づいたのは、各高校や県、県教委、石川労働局などの支援策が一定の成果を収めた結果とみてよいだろう。景気の不透明感から採用計画に慎重になりがちな企業でも、粘り強い働きかけで採用の 扉を広げさせることは可能である。「就職氷河期」再来とまで言われた今年度の就職戦線の教訓の一つは、関係機関の一体的な取り組みによって求人開拓の道は開けるという点である。就職先がまだ決まらない卒業者の支援に全力を挙げるとともに、就職支援員の学校配置など、内定率上昇を後押しした施策については、新年度から、さらに充実を図ってほしい。 県内高校生の求人倍率は昨年7月段階で0・66倍にとどまり、採用選考が始まった9 月末の内定率は45・1%(前年同月65・5%)と過去最低を記録した。だが、その後は徐々に持ち直し、2月末時点では前年の内定率を上回った。 県は昨年10月、教員OBや企業の人事担当経験者らを就職支援員として18校に常駐 させ、相談態勢の拡充や企業への働きかけを強化した。そうした取り組みが功を奏したとはいえ、就職希望者の職業選択の幅を広げるためには、早い段階での求人確保が必要である。新年度は支援員4人の増員が決まったが、今年度の求人動向を分析し、より効果的な支援策を練ってほしい。 県は生徒や保護者が企業から直接情報を収集できる「企業ガイダンス」を7月に開催す るが、9月の採用選考前に、そうした施策を集中させることが大事である。 高校生の就職難に関しては、景気低迷による求人減以外に、構造的な要因も指摘されて いる。かつて高卒の職場だったところに大卒が進出し、機械化やコンピューター化、業務の高度化などに伴って仕事の質も変化している。中小企業は人を育てる余裕がなく、即戦力を求める傾向が強まっている。 地域の産業界がどんな人材を必要としているのか、高校も求人側の実情に沿った職業教 育や就職指導が一層求められている。
◎構造改革特区の壁 規制改革こそ政治主導で
地域限定で規制を緩和する構造改革特区に16件が新たに認定された。2003年3月
から20回以上の特区認定が行われ、認定件数は累計で1100件を超えるが、一時の熱は冷めて、特区の申請も認定も減少傾向をたどっている。都道府県別の認定件数は石川県13件、富山県11件で、06年11月の12回目以降は、富山県の認定はゼロ、石川県はわずか1件にとどまっている。構造改革特区は全国展開されたものも多く、規制改革の先導役として、それなりの成果 を挙げてきた。が、省庁の受け入れやすい特区のモデル例が出尽くしたこともあって、自治体側からの提案は減るばかりである。 省庁が規制改革に必ずしも積極的ではないなか、自治体の発案で特例的に規制を緩和し 、地域を活性化するという特区制度の限界が見えてきたともいえる。地域活性化という特区制度の目的を本当に実現するには、本筋である政治主導の規制改革と地方分権改革こそ推進する必要がある。 その点での一つの鍵は、政府の行政刷新会議が医療・介護、農業など重点分野の規制改 革にどこまで踏み込めるかである。一案として仙谷由人国家戦略担当相は、日本の医師免許を持たない外国の医師でも、一定の技術レベルが認められれば、日本国内で診療が行えるよう制度改正に乗り出す考えを示した。これは目新しい案ではなく、新潟県などは医師確保策として以前、外国人医師の医療を認める特区提案を行ったが、認められずにきているのである。 また、枝野幸男行政刷新担当相は、地域経済の活性化につながる規制改革を「財源を使 わない景気対策」と位置づけ、構造改革特区の見直し、充実に積極的な姿勢を見せているが、特区制度の壁を破るには、これまでの発想を超える必要もあろう。例えば、現在の構造改革特区制度は、刑法関係を対象外としており、自治体から15件以上も出された「カジノ特区」の提案はすべて却下されている。今後の特区制度の見直しでは、タブー視されてきた分野も避けずに議論してもらいたい。
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