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第2期日韓歴史共同研究報告書の要旨

 ◆古代◆

 【4〜6世紀】

 日本側 朝鮮半島における倭人(わじん)の活動の痕跡は随所に認められるが、倭国の領土が存在したという理解は不可能だ。

 韓国側 「任那(みまな)日本府」は6世紀のみに存在したと見るが、間違った先入観を呼ぶ用語だ。事実に近いのは「安羅倭臣館」で、外務官署のような性格の機構だ。

 ◆中近世◆

 【14〜15世紀の前期倭寇(わこう)】

 日本側 前期倭寇の主体を日本人と高麗・朝鮮人の連合としたり、高麗・朝鮮人とする理解は再検討すべきで、日本人主体説が見直されてきている。

 韓国側 前期倭寇の根拠地は(日本の)三島(対馬・壱岐・松浦)地域で、発生の主要原因は、一次的には三島の経済的窮乏と南北朝末期の九州地域の政治状況がつながっていた。

 ◆近現代◆

 【朝鮮での日本語教育】

 日本側 1930年の国勢調査によると、朝鮮人で日本語の読み書きが出来たのは男11・5%、女1・9%にすぎなかった。「日本語強制」という言葉は、自主的な教育熱をもって朝鮮人が日本語を学んでいた実態が見えにくくなる点と、日本側が日本語普及に必ずしも積極的でなかった面が見えにくくなる点で問題だ。

 【竹島】

 韓国側 サンフランシスコ平和条約での竹島の地位について、米国務省内の内部文書に「1905年に日本政府は公式に日本領土と請求し、韓国からの抗議がなかったのは明らかで、島根県隠岐島の管轄下に位置するものとした」と書かれた。米国は戦勝国間の迅速な交渉と、日本との条約締結を政策の最優先課題と認識し、議論の余地が大きな事案は条約で明示しない方向で文案を作成した。最終条約文では竹島は言及されなかった。

 ◆教科書◆

 【植民地支配】

 韓国側 日本の教科書は、「植民地朝鮮」の実情については極めて簡略に触れている。朝鮮人が強制的に動員され過酷な被害を受けたことについて、日本の教科書は簡潔でドライだ。

 日本側 韓国は、日本の反省と謝罪に関する天皇の「お言葉」と「村山談話」を記述していない。

 【慰安婦】

 韓国側 96年には7種の中学教科書すべてが慰安婦に触れたが、2005年は縮小され、2種だけ残った。その根本的要因が政治・社会的状況の保守化であることは疑問の余地がない。

 日本側 韓国はいわゆる「従軍慰安婦」と「女子挺身(ていしん)隊」をいまだに混同している。挺身隊はあくまでも軍需工場などでの「勤労動員」に限定される用語だ。年端もいかぬ青少年に「戦場と性」という難題を果たして教えるべき事項なのかという教育現場の真摯(しんし)なためらいもある。

 【教科書検定】

 日本側 教科書検定後に文部科学省が左右双方からの批判にさらされることは、検定制度が適正に運用された結果だ。

 韓国側 文科省は天皇制を擁護、強化しようとし、侵略と支配の事実ができるだけ表面化しないようにしている。

 【新しい歴史教科書をつくる会】

 韓国側 日本での1990年代半ばから後半にかけての教科書攻撃は、右翼と一部保守政治家、保守メディア、「新しい歴史教科書をつくる会」という三角構図で進められた。

 日本側 日本の国内世論・学校現場も「つくる会教科書」には冷淡だ。

 【平和憲法】

 日本側 韓国の教科書は日本国憲法についてまったく説明していない。憲法9条についての記述もまったくない。戦後日本を理解するには絶対必要な要素だ。

 【歴史教科書問題】

 日本側 敗戦以前の日本について、国民の間で否定的・肯定的な評価が交錯している。「こうだ」と決めつける歴史観では現在の国民意識を反映できない。教科書執筆者は自分が正しいと信じる理念を押しつける教科書を書くべきではない。

 韓国側 韓国では日本の歴史教科書問題を過去の清算の側面から見るが、日本の歴史教科書では、侵略責任と戦争責任を全く自覚できていないため、こうした観点が初めから抜け落ちている場合が多い。これが、謝罪と反省は自分のすべきことではないと考える日本人が多く、不適切な発言が再生産される原因だ。

 【歴史認識】

 日本側 日韓の歴史観の違いが80年代以降、拡大している。日韓両国の今までの道程と、その結果としての異なる歴史認識は歴史的経験による必然的結果で、今後、両国が共通の歴史認識を持つことの困難さを示している。複数の歴史認識の共存を認め合う社会の方がはるかに自由で魅力的だ。

 韓国側 全般的に、日本の教科書は、日本の朝鮮半島に対する侵略性を弱めて表現している。韓国の教科書では日本の侵略性を明らかにし、韓国国民の抵抗と自主的な近代改革を強調している。日韓の歴史認識の隔たりを狭めるには、両国の不幸な過去と相反する歴史認識を反省し、再検討する必要がある。未来志向的な日韓関係のため、共通の歴史認識が必要だ。

2010年3月24日00時52分  読売新聞)
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