年内にも日本を抜いて世界第2の経済大国となる中国は、圧倒的な資金力を背景に、世界中で開発や投資を行っています。スリランカの現場で見えて来たのは中国による「真珠の首飾り」と呼ばれる戦略でした。
インド洋に浮かぶ島国、スリランカ。南海岸の港町、ハンバントータの郊外に広大な工事現場が広がっていました。
インド洋に面したこの辺りは、かつては塩田が広がっていたそうです。現在は、海を完全にせき止め、こちらで全く新たに港を建設しています。
岸壁の総延長が13キロにもなる巨大な港に加え、近くには国際空港を整備するという壮大な計画。第1期工事だけでも、およそ400億円がつぎ込まれています。
「航路の浚渫は365日、24時間行っています。陸上の掘削も365日休みなしで作業しています」(現場担当者)
この大がかりな港湾建設計画を進めているのが、中国。中国人が住み込みで働いているのでしょうか、看板にはやたらと中国語が目立ちます。
中国政府が、発展途上国への援助だと説明するこの計画。しかし・・・
「発展途上国に援助すると、それは大義名分ですね。第一の目的は中国の経済発展に資すること」(法政大学・趙宏偉教授)
スリランカは、中近東から東アジアへとつながる航路、シーレーンに面し、エネルギー輸送の要衝。中国はここに一大物流拠点を築こうといいます。
「コロンボ港の整備では、日本政府が最も重要な役割を果たしてくれた」(港湾当局者)
実は、つい最近までスリランカにとって最大の援助国は日本でした。これまでに総額1兆円に上る援助をしてきましたが、2007年、中国にトップの座を明け渡しました。
中国がインド洋の小さな国にここまで肩入れする理由は自国の経済発展だけではありません。
「(インド洋沿岸の)港を全部つないでいく。まさに『真珠の首飾り』」(法政大学・趙宏偉教授)
「真珠の首飾り」とは、中国が積極的に進めているスリランカ、バングラデシュ、ミャンマー、パキスタンといったインド洋一帯の港湾開発を指す言葉です。
「中国が目的にしているのは、インド市場の開放ですね。その結果、南アジア大陸を中国経済圏に囲いこむこと」(法政大学・趙宏偉教授)
中国にとって、南アジアの覇権を争う最大のライバル、インド。そのインドを取り巻く重要な港を押さえることで、経済的に取り込みつつ軍事的ににらみをきかせようといいます。
今も休みなく港の建設が続くハンバントータ。ここでも将来のアジア戦略、世界戦略を見据えて突き進む中国の姿が浮かび上がってきます。(23日18:44)