文部科学省が今春、経済危機に伴う緊急支援プランの一環で、公立校へ転入した外国籍児童・生徒を年齢より下の学年に編入することは可能だとの通知を各都道府県教育委員会へ送ったのに対し、岐阜県教委が年齢相当の学年編入を求める通知を同省の通知に添付して市町村教委へ送っていたことが分かった。同省国際教育課は「本省の意を踏まえた判断をしてもらいたい」と困惑している。
08年秋以来の経済危機で学費の高い外国人学校に通えない子どもが増えたため、文科省は3月27日、「下学年に一時的または正式に入学を認めることができる」と周知するなどの緊急支援プランを発表。同日付で各都道府県へ「下学年への入学が可能なことから適宜判断した対策を講じること」などと通知した。
だが岐阜県教委は4月、この通知を市町村へ転送する際、▽適切な学級編成のために年齢相当の学年に入れる▽必要に応じて下学年の授業を受けることはできる--などと県独自の見解を記した通知を添付した。県学校支援課は「義務教育年齢を超えた外国人生徒を中学に在籍させて無償教育を受けさせることは、日本人の生徒との不公平感を生む。一時的に下学年に編入し、後で年齢相当に戻したとしても、現場は混乱する」と説明する。
毎日新聞が外国人住民の多い外国人集住都市会議の加盟28市町を対象に行ったアンケートでは、岐阜県の3市すべてが「今後下学年編入は行わない」と回答。このうち美濃加茂市は既に下学年編入をしたことがあったが、担当者は「下学年編入は学習面のメリットは大きいが、心や体の発達度が異なる集団に入るため難しい側面もあった。今後は県の方針に従う」と話した。
同省国際教育課の担当者によると、65年の文部次官通達で在日韓国人の子どもを対象に下学年編入を認めたのがこれまで他の国籍にも応用されており、緊急支援プランはこれを再確認したという。担当者は「最終的には自治体や学校の判断となるが、生徒によっていろいろな事情があり、本人の希望などを聞きながら個別に対応してほしい」と話している。【中村かさね】
毎日新聞 2009年11月5日 2時00分