飛んできた花粉や種が混じっても訴えられる?!
3月14日、色々と騒々しい、なごやボランティア・NPOセンターで開催された「第二弾・COP10ってなーに?」に参加しました。主催者は「あいち悠々労働組合」という労働組合です。
労働組合が主催者とは珍しいなと思いましたが、親しい人たちで集まった、まだ新しい個人加盟制の組合で、労働組合としての活動も少なく、勉強会のようなものを開くことが多いそうです。
講師の河田さんのお話は、遺伝子組み換えで除草剤の耐性をもったナタネ、「GMナタネ」が、輸送中にこぼれてしまって、日本国内で既に発芽して、交配まで起こしている、という話でした。
既に国内で生えている「GMナタネ」の様子を、スライドを使っていろいろと説明してくれました。
●河田昌東さん(チェルノブイリ救援・中部理事)の話(概要)
「GMナタネ」は、油を絞ったりする目的で輸入されてくるのだけれど、それを荷揚げされる港のすぐ近くの工場で加工するならば、それほど散らばらないが、少し離れた場所で加工する場合、その輸送ルートの道端に種がこぼれてしまう。
ナタネの種はとても小さいので、普通の輸送方法だとこぼれることがよくある。
実は名古屋と三重県は多い。名古屋港に荷揚げされたナタネを、三重の工場に輸送して加工するので、その輸送ルートである23号線沿いには多数のGMナタネが生えてしまっている。
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GMナタネは、見た目では区別がつかないので、試験薬を使って調べるが、多い年には、道路沿いに1000本以上生えている年もあった。
GMナタネが拡散してしまっては大変なので、抜いて回る活動をしているが、春に1000本抜いたので、もう大丈夫だろうと思って秋に調べると、また1000本以上生えていることもあった。
ナタネは一年草だが、カナダのナタネは日本と気候が違うためか、多年草化して巨大化しているのものも多いです。
根には年輪も出来ている。
空き地などで、毎年除草剤が撒かれているようなところに、とても大きくてきれいなナタネが咲いている場合などは、大変分かりやすい。
他にも街道沿いにきれいに咲いていて、これは農家の人が植えているのかと思っていたら、GMナタネだったこともあった。
除草剤には2種類の系統があるのですが、普通のGMナタネは、1種類の除草剤にしか耐性がないのに、野生化してしまったものの中には、交雑して両方の除草剤の耐性を持ったものが出てきています。
また、行政などは認めないのですが、GMナタネは国内で既に世代交代をしています。
世代交代をして、種を飛ばして広がっています。
今生えているものの多くは、海岸線の道路端ですが、中には内陸で発見されたものもあります。
もっと問題なのは、日本に自生しているナタネの仲間と交雑してしまうことです。
川原などに生えている外来種のカラシナだけでなく、ブロッコリーやカブ、コマツナ、チンゲンサイ、ミズナなどもナタネの親戚ですから交雑できます。
これらは花の咲く時期も近く、交雑は起こります。
ブロッコリー、カラシナなどとの交雑種が既に見つかっています。
普通は違う種同士の交雑はめったに起きないのですが、ナタネ科の植物は交雑しやすいのです。
とはいえ、違う種で交雑したものは、種が貧弱になったりするので、比較的見つけやすいです。
また、一度交雑したものを、元の種と交配すると、一気に特徴の獲得が進行するという「戻し交配」という現象があるのですが、それが発生してしまうと、止めることができなくなってしまいます。
いまは抜き取り作業などを繰り返して水際で削減していますが、本格的な交雑が発生した場合、取り返しがつかないことになってしまうでしょう。
このGMナタネはカナダやアメリカで栽培されているものですが、カナダなどでは、もともと何代も自家採種をしていた農家のナタネ畑に、花粉が飛んできたのでしょうか、GMナタネの遺伝子が混じっているということで、GMナタネの企業から「特許権の侵害」ということで訴えられて、裁判沙汰になった事例も発生しています。
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現在の遺伝子技術は「種の壁」を容易に超えてしまいます。
本来は、生物同士の種の壁というのは数千万年かかって超えるものだったのが、どんどん壊してしまっている。
たとえば、ポテトチップの原料のポテトには、大腸菌やキンギョソウなどの遺伝子が組み込まれています。
いくつもの他の生き物の遺伝子を組み込んで、虫に食べられないとか、薬に強いなどの効果を出しています。
ほうれん草の遺伝子を組み込んだブタもあります。これは植物性の油をとることが目的です。人間の肝臓のDNAを組み込んだ稲は、色々な毒素に耐性を持たせるためです。
人の成長ホルモン遺伝子を組み込んだシャケもあります。
このシャケは、すぐに大きくなるのですが、繁殖力がありません。
このシャケが養魚場から逃げたとします。
シャケは大きなオスと繁殖する傾向を持っているのですが、この大きなオスは繁殖力がないわけです。
このようなシャケが出てきて、20代ほど世代を経ると、シャケは絶滅するという学説も出されています。
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河田昌東さんの話を聞いて、「港の周辺の荒地などの、道路に近い部分に、大きなナタネが、黄色くきれいに咲いている」という光景は、ここ数年、筆者も目撃していた現象であったことを思い出しました。名古屋の港地区は、GMナタネが発見されている地域に当たります。
見かけた当時は、なんの手入れも堆肥もないであろう土地に、いきなり巨大なナタネが咲いている、ということに、まったく疑問を持たなかったのですが、あれは「GMナタネ」だったのかも知れません。
しかし「勝手に飛んできた花粉が交雑してしまったことを理由に、難癖を付けられる」というのは、まったく納得のいかない話です。
これについて、どういう話なのかについて、詳しく聞いてみました。
◇
Q(Esaman):勝手に飛んできた花粉に交雑して、訴えられるというのは、撒き散らす側に責任がある話のような気がして、納得がいかないのですが?
A:
GMナタネを開発したのは「モンサント社」というところで、農家に対して、除草剤とナタネの種をセットで販売しています。
そして販売契約に、ナタネの種子を回収しないことが定められています。
訴えられた農家は、カナダで3代に渡ってナタネを栽培している農家で、ずっと自家採種していた農家でした。
故意ではなく、どこかから花粉が飛んできたのか、種が飛んできたのかで、その農家のナタネ畑にGMナタネが混ざったのだと思いますが、当然その農家の人たちは、そのことは知りません。
そこに、モンサント社の雇った「遺伝子警察」という、退職した警官で作った組織がやってきて、勝手にナタネを採集して「GMナタネの遺伝子が混じっている」と言い出して訴えられたのです。
もちろん、農家の人はGMナタネを買っても植えてもいないので、モンサント社の訴えは「自家採種する権利」の侵害であると戦ったわけですが、3~4年の間裁判をして、最高裁まで言って、1票の僅差で負けてしまいます。
農家の自家採種の権利よりも「企業の著作権の侵害」の方が重大であるとの判決になったのです。
もちろん、故意に混ぜたわけではないので、モンサント社の要求していた「GM遺伝子の混じったナタネの収穫代金の支払い」はしなくてもよいことになったのですが、農家の人は、その農地に作付けできなくなってしまったのです。
Q(Esaman):故意ではなくて、勝手に混ざったものなのに、無茶苦茶な話のように思うのですが?
A:
モンサント社というのは、もともとは枯葉剤を作っていた農薬の会社なのですが、現在は世界の種の4割を扱う企業になっています。
これはアメリカ政府の方針でもあるのです。
アメリカ大陸中西部の大穀倉地帯というのは、ブッシュ政権の支持基盤でした。アメリカは訴訟社会で、モンサント社は農家のナタネを勝手に調べてどんどん訴えます。訴訟費用はかなり高額で時間もかかるので、すぐに賠償金を払って済ませる農家も多いのです。
Q(Esaman):わざと混入させて、訴えて乗っ取る事もできそうですね。防止策はないのでしょうか?
A:
その可能性も十分にあります。
今度のCOP10やMOP5は、国際的な関係で、そのような事件が発生したときに、誰が責任をとるのか、ということを話し合う場でもあります。
Q:(会場から)行政はCOP10の内容に興味がなく、広告代理店などに頼んで、どうやって人を集めるか、ということしか考えていないですね。
A:
政府関係者は、COP9のように、意見が対立して分裂してしまい、国際的な評価を下げることを嫌がっているかもしれません。
自治体の人たちは、京都議定書のように「名古屋議定書」を作ってもらって、評価を上げたいと思っているかもしれません。
ですが、今回のCOP10では、分裂や対立によって「失敗」といわれるのを恐れて、あいまいな結果に持ち込もうとすることもあるかもしれませんね。
たとえば「条約」は強制力がありますが「ガイドライン」というのは拘束力はありません。このようなものになってしまう可能性も、ないわけではないと思います。
日本では、NGOの力が弱くて残念です。このような会議では、政府などとも対等に話すことができるのですが、アピール力なども不足しています。
◇
故意でもなく、本人も自覚していないのに「花粉か種が、飛んできて混ざってしまった」だけで訴えられるというのは、なんと理不尽な話でしょうか。
しかも企業に雇われた「遺伝子警察」なるものが、人の畑の作物を勝手に持って行って調べて訴えるとは、なんだか気持ちの悪いものを感じてしまいます。
そんなに種の著作権が大事なら、飛んで行かないように、ちゃんと管理しろと言いたくなる話です。
この話を聞いて、あまりの理不尽さに空恐ろしくなると同時に、遠くの出来事のように感じていたCOP10やMOP5の話が、急速に「身近な話題」として感じられるようになりました。
最後に、実際に「GMナタネの抜き取り作業」に参加した人の話を紹介します。
●実際に「抜き取り作業」に参加した人の話(概要)
見た目ではわかりません。行政などにも話をして、自己責任で抜き取り作業をしました。
道路の中央分離帯などは危なくて危険ですが、沢山生えています。
GMナタネは、イネ課の植物などが沢山生えている所では、負けてしまってあまり育たないのですが、荒地には強いのです。何もないような過酷な環境だととてもよく育ちます。コンクリートやアスファルトの隙間にも、とても細くなって生えています。
高速道路の出入り口のようなところなどにも生えています。
試験薬はとても高い(2000円)ので、除草剤をかけてみるのが一番手っ取り早いです。
河田先生は、抜き取ったGMナタネを、確認のために栽培していますが、モンサント社からは訴えられないようです。
訴えてもらったほうが、色々と広めるきっかけとなるので、訴えてほしいと思っているようですが。
関連記事:
・上村英明さんに聞く(2) 先住民族・土人の定義について
http://www.janjannews.jp/archives/2854100.html
・上村英明さんに聞く(1) 先住民族とCOP10の意外な関係
http://www.janjannews.jp/archives/2824354.html
・先住民族は「コップなんとか」で活躍できるか? 秋辺日出男さんのお話
http://www.janjannews.jp/archives/2772198.html
関連リンク:
・あいち悠々労組【毎週土曜日(11-18時)労働相談を実施(052-938-8501)】
http://www42.tok2.com/home/aitiyuuyuu/
・チェルノブイリ救援・中部
http://www.chernobyl-chubu-jp.org/
◇記者の「ブログ」「ホームページ」など
Esaman記者プロフィール
http://profile.livedoor.com/esaman/
3月14日、色々と騒々しい、なごやボランティア・NPOセンターで開催された「第二弾・COP10ってなーに?」に参加しました。主催者は「あいち悠々労働組合」という労働組合です。
労働組合が主催者とは珍しいなと思いましたが、親しい人たちで集まった、まだ新しい個人加盟制の組合で、労働組合としての活動も少なく、勉強会のようなものを開くことが多いそうです。
講師の河田さんのお話は、遺伝子組み換えで除草剤の耐性をもったナタネ、「GMナタネ」が、輸送中にこぼれてしまって、日本国内で既に発芽して、交配まで起こしている、という話でした。
既に国内で生えている「GMナタネ」の様子を、スライドを使っていろいろと説明してくれました。
●河田昌東さん(チェルノブイリ救援・中部理事)の話(概要)
「GMナタネ」は、油を絞ったりする目的で輸入されてくるのだけれど、それを荷揚げされる港のすぐ近くの工場で加工するならば、それほど散らばらないが、少し離れた場所で加工する場合、その輸送ルートの道端に種がこぼれてしまう。
ナタネの種はとても小さいので、普通の輸送方法だとこぼれることがよくある。
実は名古屋と三重県は多い。名古屋港に荷揚げされたナタネを、三重の工場に輸送して加工するので、その輸送ルートである23号線沿いには多数のGMナタネが生えてしまっている。
会場の様子。スクリーンの赤い丸が「GMナタネ」が生えているのが確認された地域。三重がダントツで多い。(撮影・Esaman、以下同じ)
GMナタネは、見た目では区別がつかないので、試験薬を使って調べるが、多い年には、道路沿いに1000本以上生えている年もあった。
GMナタネが拡散してしまっては大変なので、抜いて回る活動をしているが、春に1000本抜いたので、もう大丈夫だろうと思って秋に調べると、また1000本以上生えていることもあった。
ナタネは一年草だが、カナダのナタネは日本と気候が違うためか、多年草化して巨大化しているのものも多いです。
根には年輪も出来ている。
空き地などで、毎年除草剤が撒かれているようなところに、とても大きくてきれいなナタネが咲いている場合などは、大変分かりやすい。
他にも街道沿いにきれいに咲いていて、これは農家の人が植えているのかと思っていたら、GMナタネだったこともあった。
除草剤には2種類の系統があるのですが、普通のGMナタネは、1種類の除草剤にしか耐性がないのに、野生化してしまったものの中には、交雑して両方の除草剤の耐性を持ったものが出てきています。
また、行政などは認めないのですが、GMナタネは国内で既に世代交代をしています。
世代交代をして、種を飛ばして広がっています。
今生えているものの多くは、海岸線の道路端ですが、中には内陸で発見されたものもあります。
もっと問題なのは、日本に自生しているナタネの仲間と交雑してしまうことです。
川原などに生えている外来種のカラシナだけでなく、ブロッコリーやカブ、コマツナ、チンゲンサイ、ミズナなどもナタネの親戚ですから交雑できます。
これらは花の咲く時期も近く、交雑は起こります。
ブロッコリー、カラシナなどとの交雑種が既に見つかっています。
普通は違う種同士の交雑はめったに起きないのですが、ナタネ科の植物は交雑しやすいのです。
とはいえ、違う種で交雑したものは、種が貧弱になったりするので、比較的見つけやすいです。
また、一度交雑したものを、元の種と交配すると、一気に特徴の獲得が進行するという「戻し交配」という現象があるのですが、それが発生してしまうと、止めることができなくなってしまいます。
いまは抜き取り作業などを繰り返して水際で削減していますが、本格的な交雑が発生した場合、取り返しがつかないことになってしまうでしょう。
このGMナタネはカナダやアメリカで栽培されているものですが、カナダなどでは、もともと何代も自家採種をしていた農家のナタネ畑に、花粉が飛んできたのでしょうか、GMナタネの遺伝子が混じっているということで、GMナタネの企業から「特許権の侵害」ということで訴えられて、裁判沙汰になった事例も発生しています。
行政などが否定していた「GMナタネの次世代」が発芽している証拠写真。真ん中の枯れた親株の下に、その株からの種が発芽している。GMナタネは日本国内でも普通に世代交代できる。
現在の遺伝子技術は「種の壁」を容易に超えてしまいます。
本来は、生物同士の種の壁というのは数千万年かかって超えるものだったのが、どんどん壊してしまっている。
たとえば、ポテトチップの原料のポテトには、大腸菌やキンギョソウなどの遺伝子が組み込まれています。
いくつもの他の生き物の遺伝子を組み込んで、虫に食べられないとか、薬に強いなどの効果を出しています。
ほうれん草の遺伝子を組み込んだブタもあります。これは植物性の油をとることが目的です。人間の肝臓のDNAを組み込んだ稲は、色々な毒素に耐性を持たせるためです。
人の成長ホルモン遺伝子を組み込んだシャケもあります。
このシャケは、すぐに大きくなるのですが、繁殖力がありません。
このシャケが養魚場から逃げたとします。
シャケは大きなオスと繁殖する傾向を持っているのですが、この大きなオスは繁殖力がないわけです。
このようなシャケが出てきて、20代ほど世代を経ると、シャケは絶滅するという学説も出されています。
実際に採集してきた「GMナタネ」を前に説明する河田さん。手前の袋に乗っている青と紫の細いものが、二種類の除草剤の耐性を調べる試験紙。一回分2000円する。
河田昌東さんの話を聞いて、「港の周辺の荒地などの、道路に近い部分に、大きなナタネが、黄色くきれいに咲いている」という光景は、ここ数年、筆者も目撃していた現象であったことを思い出しました。名古屋の港地区は、GMナタネが発見されている地域に当たります。
見かけた当時は、なんの手入れも堆肥もないであろう土地に、いきなり巨大なナタネが咲いている、ということに、まったく疑問を持たなかったのですが、あれは「GMナタネ」だったのかも知れません。
しかし「勝手に飛んできた花粉が交雑してしまったことを理由に、難癖を付けられる」というのは、まったく納得のいかない話です。
これについて、どういう話なのかについて、詳しく聞いてみました。
Q(Esaman):勝手に飛んできた花粉に交雑して、訴えられるというのは、撒き散らす側に責任がある話のような気がして、納得がいかないのですが?
A:
GMナタネを開発したのは「モンサント社」というところで、農家に対して、除草剤とナタネの種をセットで販売しています。
そして販売契約に、ナタネの種子を回収しないことが定められています。
訴えられた農家は、カナダで3代に渡ってナタネを栽培している農家で、ずっと自家採種していた農家でした。
故意ではなく、どこかから花粉が飛んできたのか、種が飛んできたのかで、その農家のナタネ畑にGMナタネが混ざったのだと思いますが、当然その農家の人たちは、そのことは知りません。
そこに、モンサント社の雇った「遺伝子警察」という、退職した警官で作った組織がやってきて、勝手にナタネを採集して「GMナタネの遺伝子が混じっている」と言い出して訴えられたのです。
もちろん、農家の人はGMナタネを買っても植えてもいないので、モンサント社の訴えは「自家採種する権利」の侵害であると戦ったわけですが、3~4年の間裁判をして、最高裁まで言って、1票の僅差で負けてしまいます。
農家の自家採種の権利よりも「企業の著作権の侵害」の方が重大であるとの判決になったのです。
もちろん、故意に混ぜたわけではないので、モンサント社の要求していた「GM遺伝子の混じったナタネの収穫代金の支払い」はしなくてもよいことになったのですが、農家の人は、その農地に作付けできなくなってしまったのです。
Q(Esaman):故意ではなくて、勝手に混ざったものなのに、無茶苦茶な話のように思うのですが?
A:
モンサント社というのは、もともとは枯葉剤を作っていた農薬の会社なのですが、現在は世界の種の4割を扱う企業になっています。
これはアメリカ政府の方針でもあるのです。
アメリカ大陸中西部の大穀倉地帯というのは、ブッシュ政権の支持基盤でした。アメリカは訴訟社会で、モンサント社は農家のナタネを勝手に調べてどんどん訴えます。訴訟費用はかなり高額で時間もかかるので、すぐに賠償金を払って済ませる農家も多いのです。
Q(Esaman):わざと混入させて、訴えて乗っ取る事もできそうですね。防止策はないのでしょうか?
A:
その可能性も十分にあります。
今度のCOP10やMOP5は、国際的な関係で、そのような事件が発生したときに、誰が責任をとるのか、ということを話し合う場でもあります。
Q:(会場から)行政はCOP10の内容に興味がなく、広告代理店などに頼んで、どうやって人を集めるか、ということしか考えていないですね。
A:
政府関係者は、COP9のように、意見が対立して分裂してしまい、国際的な評価を下げることを嫌がっているかもしれません。
自治体の人たちは、京都議定書のように「名古屋議定書」を作ってもらって、評価を上げたいと思っているかもしれません。
ですが、今回のCOP10では、分裂や対立によって「失敗」といわれるのを恐れて、あいまいな結果に持ち込もうとすることもあるかもしれませんね。
たとえば「条約」は強制力がありますが「ガイドライン」というのは拘束力はありません。このようなものになってしまう可能性も、ないわけではないと思います。
日本では、NGOの力が弱くて残念です。このような会議では、政府などとも対等に話すことができるのですが、アピール力なども不足しています。
故意でもなく、本人も自覚していないのに「花粉か種が、飛んできて混ざってしまった」だけで訴えられるというのは、なんと理不尽な話でしょうか。
しかも企業に雇われた「遺伝子警察」なるものが、人の畑の作物を勝手に持って行って調べて訴えるとは、なんだか気持ちの悪いものを感じてしまいます。
そんなに種の著作権が大事なら、飛んで行かないように、ちゃんと管理しろと言いたくなる話です。
この話を聞いて、あまりの理不尽さに空恐ろしくなると同時に、遠くの出来事のように感じていたCOP10やMOP5の話が、急速に「身近な話題」として感じられるようになりました。
最後に、実際に「GMナタネの抜き取り作業」に参加した人の話を紹介します。
●実際に「抜き取り作業」に参加した人の話(概要)
見た目ではわかりません。行政などにも話をして、自己責任で抜き取り作業をしました。
道路の中央分離帯などは危なくて危険ですが、沢山生えています。
GMナタネは、イネ課の植物などが沢山生えている所では、負けてしまってあまり育たないのですが、荒地には強いのです。何もないような過酷な環境だととてもよく育ちます。コンクリートやアスファルトの隙間にも、とても細くなって生えています。
高速道路の出入り口のようなところなどにも生えています。
試験薬はとても高い(2000円)ので、除草剤をかけてみるのが一番手っ取り早いです。
河田先生は、抜き取ったGMナタネを、確認のために栽培していますが、モンサント社からは訴えられないようです。
訴えてもらったほうが、色々と広めるきっかけとなるので、訴えてほしいと思っているようですが。
関連記事:
・上村英明さんに聞く(2) 先住民族・土人の定義について
http://www.janjannews.jp/archives/2854100.html
・上村英明さんに聞く(1) 先住民族とCOP10の意外な関係
http://www.janjannews.jp/archives/2824354.html
・先住民族は「コップなんとか」で活躍できるか? 秋辺日出男さんのお話
http://www.janjannews.jp/archives/2772198.html
関連リンク:
・あいち悠々労組【毎週土曜日(11-18時)労働相談を実施(052-938-8501)】
http://www42.tok2.com/home/aitiyuuyuu/
・チェルノブイリ救援・中部
http://www.chernobyl-chubu-jp.org/
◇記者の「ブログ」「ホームページ」など
Esaman記者プロフィール
http://profile.livedoor.com/esaman/
将来、遺伝子テロも起きそうです。GMナタネだけが生き延びて、他のナタネは絶滅か、収穫量が減少するような、病原菌をばらまく危険性もなくはない。