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【日韓歴史研究】韓国に主観的歴史観、世論も変化
「日韓での歴史共同研究には無理がある。韓国の歴史学者は『正しい歴史』という主観的な歴史観を持ち、自分たちにとって『正しくない歴史』はみな歪曲(わいきょく)されたものだと主張するからだ」。
23日発表された日韓歴史共同研究委員会の研究成果について、韓国史を専門とする日本の歴史学者はこう解説した。研究は、韓国にとり歴史共同研究が「日本側に歪曲された歴史」を「韓国にとって正しい歴史」に変えようとする作業であることを日本側に強く印象付ける結果となった。
韓国側は最終報告書発表を当初、今年2月中に設定することに固執した。これにも、ある意図が見え隠れしていた。今年が日韓併合100年という節目の年であり、独立運動の記念日(3月1日)までに発表し、世論の関心が向くことを狙ったとみられている。
日韓歴史共同研究委員会(第2期)が発足した2007年当時、韓国は左派の盧武鉉政権で「歴史の清算」に熱心だった。盧政権は、韓国の「正しい歴史」を日本側との研究に反映させ日本の教科書を修正することを目指していた。選ばれた韓国側委員はおのずと対日強硬派や左派学者となった。
一方で、韓国では2008年に李明博政権へ保革逆転。李政権の対日姿勢は未来志向で支持率が高く、世論の風向きは変わりつつあるという状況の変化も起きていた。現在、韓国では教科書問題に対する関心も以前ほど高くない。
李明博大統領は今月、独立運動の記念日の演説で「為政者たちのせいで亡国の悲運を迎えた」と、植民地時代について自国の側にも責任があったことを認め、「過去にとらわれず、人類共栄の新たな未来を開拓していかなければならない」と訴えた。
第2期委員会の趙●(=王へんに光)委員長は23日の記者会見で、「歴史の対話の必要性に韓国と日本の研究者たちがみな共感した」と評価したものの、近現代史については「争点として取り上げるには限界があったし、難しさもあった」と述べ、複雑な環境下で、日韓が歴史の共通認識に至らなかったことを認めた。(ソウル 水沼啓子)