2010年2月2日
算数の説明をしているとき、論理的に説明しても伝えられないように思うことがあります。「Don’t Think. Feel !(考えるな、感じろ!)」というのはブルース・リーの映画「燃えよドラゴン」の冒頭のセリフですが、算数の説明をしているとき、ふとそんな言葉がよぎることがあります。
◇
「ももたろう」のお話は、言葉を覚えるか覚えないころから何度も聞かされた人も多いと思うので誰でも知っていることでしょう。
「むかし、あるところにおじいさんとおばあさんがいました。おじいさんは、……」
と始まります。このように、お話にでてくる、助詞「は」と「が」は、はじめががで次がはです。こんなことは誰でも知っていて、幼稚園児でも使い分けられます。
しかし、その理由の説明は案外難しいのではないでしょうか。
「キッズレーダー」で3回にわたって「剰余系」について書きました。1回目の「2による剰余系」では、偶数を0、奇数を1として、たし算を
0+0=0、0+1=1
1+0=1、1+1=0
などと説明し、「10による剰余系」では、一の位どうしのたし算やかけ算と説明しました。
実は、「2による剰余系」も、二進法の一の位どうしのたし算やかけ算と説明できます。しかし、二進法などを持ち出すと、かえって分かりにくいと思い省きました。
しかし、もし、十進法も二進法も何も知らない小学一年生に、十進法か二進法を教えた場合、おそらく二進法を学ぶ方が容易であろうということは同意していただけるかと思います。「nによる剰余系」は「n進法」の一の位の数字の計算と見ることもできます。
一の位どうしのたし算やかけ算、すなわち、「10による剰余系」はほとんど難なく理解できますので、剰余系は本来、さほど難しくはないはずです。
ところで、「は」と「が」は「ももたろう」のお話ばかりではなくいたるところに出てきます。
中学二年生の数学の検定教科書に「二つの直線が平行ならば、同位角は等しい」とあります。どうやら、前提の部分にがを使い、結論にはを使うようです。こんなことは、普段は何も気をつけなくても自然に使い分けられていますが、説明しようとすると戸惑ってしまう人が多いのではないでしょうか。
野田尚史は「は」と「が」の使い分けは日本語の文法の中で最も難しい問題としてこれまで多くの研究が行われてきた。(『「は」と「が」』 野田尚史著 くろしお出版)
と言っていますが、誰でも、なんとなく使い分けられることをいざ説明するというのは意外に難しいものだということを感じます。
「哲学」や「言語学」では、わかってしまえば簡単なことなのに説明するとき、難しい言い回しをしないときっちり表現できないことが多いようです。しかし、そういう言葉を経なくても感じ取れるのではないかと思うこともあります。
高校の数学の先生で、「大学の数学科には行かない方がいいぞ。哲学みたいだったぞ」という人が少なくないそうです。
論理的な学問と見られている算数・数学でも、大枠の部分については「考えるな感じろ」という感じになるのかもしれません。
そうして、いったん分かってしまったことを書き表す文章と、まだ分かっていない人が感じ取れる文章とは違うのではないかと感じます。
小学生には、感じ取れる文章を読ませると、かなり高度とされる概念も伝えられるのではないかと思うのです。
記事提供:『学校選択』 全国中学入試センター
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