売春取締が甘いとフン=セン首相が今月頭に所轄省庁を叱ったことをきっかけに、カンボジアではこの半月に59の売春施設が警察により強制閉鎖、280人の売春婦が失職したことがわかった。うち85人は検挙を免れて逃走したという。カンボジアのNGOが匿名で発表した。
カンボジアでは近年、売春宿といったわかりやすい場所で売春が行われることは少なくなり、検挙を免れるためにカラオケバー・マッサージパーラー・喫茶店といった間接的な施設で行われるようになっているが、今回はそうした施設も多く取締対象となっている。
内務省人身売買対策局のビット=キムホン局長は、今回の一連の取締は人身売買を減らすために行なっていると15日述べるとともに、「政府は2010年を人身売買撲滅年と定めた」と発表した。
カンボジアHIV/AIDS撲滅連合(CACHA)が昨年、売春婦1,100人への聞き取り調査を行なったところ、大多数が、性取引を行うことを自発的に選び取っていると回答した。人身売買の犠牲者は最大に見積もっても高々7パーセント強との結果が出ている。
プノンペンの性従事者を糾合する目的で結成された女性団結ネットワーク(WNU)の技術助手を務めるリー=ピセイ女史は、以前ならコンドームや医療や権利について売春婦たちに教えるには売春宿へ行けばよかったが、近年ではもっと間接的な場所へ行ってまず「あなたは性従事者ですか?」と尋ねなければならず、そんなの「いいえ」と答えるに決まっている、と困難を訴えた。
保健NGO「PSI」のカンボジア担当局長を勤めるクリス=ジョーンズ氏は、今回首相みずから検挙を指示したことで取締が本格化・長期化する可能性を指摘し、これは売春の地下化を招いてHIV/AIDS対策を難しくするおそれがあると述べた。国連エイズ合同計画(UNAIDS)のカンボジア担当調整員を勤めるトニー=リスレ氏も、取締により売春婦にHIV予防などの支援を行うことがますます難しくなるおそれがあると述べた。
プノンペン市のカエプ=チュテマー市長と国家警察のネート=サヴアン長官は10日会合し、今後もこうした検挙を続けていくことを確認し、営業許可証を持たない施設は即時強制閉鎖することを定めたという。「営業許可証があっても、売春が行われていれば強制閉鎖の対象となる」とキムホン局長は補足した。
2010年03月17日
カンボジアウォッチ編集部
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