李天秀は当時、自らの状況を訴えるために、サウジ・プロサッカー連盟とサウジ・サッカー協会を訪ねた。連盟も協会もチームに電話をかけて賃金を支払うよう伝えたが、それもその場限りだった。

　李天秀はチームのオーナーが2月末までに未払いの給与をすべて支払うと明言したため、その言葉を信じてしばらく待ったが、それもやはり守られなかった。そこで李天秀はチームの事務所に出向き、「すぐにわたしのパスポートとビザを持ってこい」と要求した。その時点で、李天秀のパスポートには2カ月以上滞在可能なビザが残っていたが、その場にいた主務がパスポートだけでも手渡すよう目配せした。こうしてようやく、李天秀は韓国に帰国することができたのだ。

　現在、李天秀は国際サッカー連盟（FIFA）にアル・ナスルでの賃金未払い状況について訴えるための資料を準備している。8億ウォンの未払い分は何としても受け取る構えだ。

■「W杯に出場できるのなら、5分でも良いから必死にプレーしたい」

　李天秀とアル・ナスルの契約は今年6月末まで残っている。サウジのリーグはすでに終了しているが、湾岸クラブ・チャンピオンシップでの2試合が残っている。これまでFIFAは、賃金未払いが3カ月以上続いた場合には、選手がそのチームを去って別のチームと契約しても良いという判断を下している。

　李天秀は現在所属チームがないため、新たな移籍先を探している。給与が下がっても、試合にさえ出場できれば契約に応じる考えだ。李天秀は「選手であるからには、誰だって考えは同じなはずだ。わたしもW杯に出場したいという夢を抱いている。給与の問題は複雑だが、ピッチでは必死にプレーしたい。今はケガもないし、コンディションも良い。南アフリカに行けるのであれば、たとえ5分でも良いから必死にプレーしたい」と切実な思いを語った。

　現在、Kリーグでは全南が李天秀の出場に強く反対しているため、韓国でプレーすることは容易ではない。エージェントによると、日本のJリーグで李天秀に関心を示しているチームがいくつかあるという。李天秀は「わたしは選手として今も健在で、代表の試合でもやれるということを示せるチームに行きたい」と述べた。

ノ・ジュファン記者