サッカー:李天秀「サウジで給与8億ウォンが未払い」(中)

 李天秀は「やっとのことでサウジに来たという思いからも、チームのために必死にプレーした。昨年末には5連勝して順位も躍進した。しかしチームは、選手たちに当然支払うべき給与を3カ月も滞納し、到底我慢できなかった」と語る。

 李天秀はアル・ナスルの副社長、事務局長らと何度も話し合いを行った。その度に彼らは、「もう少し待ってほしい。スポンサーから金が入ってこない。数日中に必ず支払う」との言い訳を繰り返したという。アル・ナスルはサウジテレコムとスポンサー契約を結んでいる。しかし、チーム首脳部の言葉通り給与が支払われることはなかった。約束が破られるたびに、監督や事務局長らに給与の支払いを要求するという状況が、数カ月も続いた。李天秀によると、給与の未払いに対してチーム関係者は、「インシャリ(神の意向によるもの)」という理解できない説明ばかりを繰り返していたという。

 直後に李天秀がチームを去る決心をする決定的な事件が起こった。今年初めにアウェーで試合を行う予定があったが、李天秀は首に痛みを感じていたため、通訳を通じてチームの医療陣に遠征の参加は難しいと述べ、監督に伝えてほしいと頼んだ。ところが数日後、李天秀は無断で遠征に参加しなかったとして、4000万ウォン(約320万円)の罰金を命じられた。

「パスポートが入った金庫を持ってでも逃げ出したかった」

 これに対し、李天秀の怒りが爆発した。副社長や監督、事務局長らに対し、「分かった。罰金を支払うから、これまで未払いとなっている給与をすべて支払ってほしい。そして、わたしのパスポートとビザを持ってこい」と怒鳴った。

 李天秀は欧州での移籍市場が始まる今年1月初めから2月末までの間にアル・ナスルを去るため、密かに準備をしていた。李天秀は「アル・ナスルはプロではない。基本的な契約さえ守らないのだから。早くチームを去りたかったため、チームが金庫に保管しているパスポートを返すよう求めたが、これさえも簡単には応じようとしなかった」と振り返る。

 一般的に、プロサッカーチームに所属する選手のパスポートは、チームがすべて保管している。海外での遠征試合が多いため、まとめて預かった方が管理しやすいからだ。サウジでは、プロチームに選手の出入国を許可する権限まで与えられている。そのため、李天秀が出国しようとしても、サウジを去ることができないという状況が続いた。

スポーツ朝鮮/朝鮮日報日本語版

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