【社説】自動車の海外生産阻止で国内雇用は守れない
全国民主労働組合総連盟(民主労総)傘下の全国金属労働組合(金属労組)は、所属労組に対し、自動車各社の経営側との労使交渉で「国内外生産比率制」の導入を求めるとする指針を示した。金属労組は同指針で、「組合員の雇用安定と産業発展を通じた雇用創出に向け、2009年の生産比率を維持しなければならない」と主張した。
現代自動車では昨年、生産台数約310万台のうち、海外工場での生産比率は48.1%だった。今年は国内で170万台、海外で176万台と、海外工場での生産比率が初めて国内工場を上回る見通しだ。起亜自動車も、米ジョージア工場の稼働で海外生産が昨年の25.7%から今年は30%台に高まるとみられる。金属労組は現代・起亜自の海外生産を昨年水準まで減らすことを要求し、今後も増やすことは認めないとしている。
現代自は昨年、世界の自動車各社で最高となる2兆2350億ウォン(約1780億円)の営業利益を上げた。世界シェアも08年の4.4%から5.2%へと高まった。世界経済が低迷する中で現代自が善戦したことには、中国やインドをはじめとする現地工場による貢献が大きかった。現代自は昨年、中国市場の販売が94%伸び、シェア4位に浮上。インド市場でのシェアは20.6%で2位に躍進した。
自動車メーカーの海外工場設置は、通商摩擦を回避し、物流コストを削減し、市場を確保することが目的だ。特に急成長している新興市場は関税障壁が高く、完成車を持ち込むのが困難だ。現地に組み立て工場を建設し、部品を輸出する方式の方がはるかに門戸が広い。それは世界の自動車業界での激しい生き残り競争に打ち勝つ道だ。ゼネラルモーターズ(GM)、フォルクスワーゲン、ホンダなどは既に海外生産比率が60%を超えている。トヨタも同比率を50%台に引き上げた。海外工場を設置しなければ、国内の雇用が増えるどころか、海外市場での競争で押され、現在の雇用すら守れなくなる状況だ。
現代・起亜自が海外に出ざるを得ないのは、労組が毎年、恒例行事のようにストライキを行い、自動車の販売状況による生産ラインの切り替えや労働力の配転も阻み、会社の悩みの種となってきたことも一因だ。金属労組は海外生産の制限といった横暴が国内の雇用をさらに危険にさらす事実を悟るべきだ。
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