早実、鉄腕伝説 斎藤投手「最後に田中君に勝てた」
2006年08月22日
早稲田実の斎藤は、こみ上げるものをこらえられなかった。初優勝の心境を聞かれても、いつもマウンドで手にする水色のハンカチを口に当て、すぐには話せなかった。
決勝、再試合とも全イニングを投げきった早稲田実の斎藤
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「僕が試合でポーカーフェースなのは、自分の気持ちを表に出すと投球が乱れるから」といい、クールを装ったエース。
次々にわいてくる喜怒哀楽を抑え、打者に集中する作業の連続が、どれほどつらかったか。もう投げなくていいと解放されたとき、様々な思いがせきを切ってあふれた。
9回、先頭に安打を許し、続けて初球をバックスクリーン左に打ち込まれた。「やばいと思ったが、どっちにしろ3アウトを取らないといけないんだから」
本間篤から三振を奪い、岡川を二飛に取ったときだ。笑みが浮かんだ。それはほんの一瞬。そんな自分をとがめるように表情は消えた。打席には2試合の決勝で投げ合う田中が立っている。
スライダー、直球を6球投げて2―1。4球目はボールだったが、147キロの直球を見せていた。7球目の前、丹念にマウンドを整えた。「これで最後だと感謝の気持ちを込めた」。ウイニングショットは速球。空振り三振で歓喜を呼んだ。
「あそこで三振を取り、田中君に勝てたと実感した」
7試合に先発し、6試合で完投。1回戦で打者2人だけマウンドを譲ったものの、計948球で、全207アウトはみずからの右腕で奪った。
「ほかの投手がほえたりするように、自分のポーカーフェースにも計り知れない力があります」。すまし顔の鉄腕がかもす迫力に、数々の強豪は屈していった。
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