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佐賀北(佐賀)ニュース

疲れこらえ110球入魂 久保貴大投手

2007年08月23日

 110球目。最後の打者への決め球は、やっぱり得意のスライダーだった。空振り三振。佐賀北に歓喜の瞬間が訪れた。久保は一瞬、頭の中が真っ白になったが、両腕を突き上げると駆け寄ってくる仲間たちにもみくちゃにされた。

写真2番手でマウンドにあがった久保=22日、阪神甲子園

 「きょうは苦しく、試合が長く感じた」

 先発の馬場が打ち込まれ、2回途中からマウンドへ送られた。この日で7試合目。疲労はピークで、腕が振れず、ほぼ毎回長打を浴びた。味方の攻撃は三者凡退が続き、ベンチでゆっくりと休む間もなかった。

 7回には佐賀大会初戦の途中から続けてきた連続無失点記録がストップし、「気持ちが切れそうになることもあった」。

 だが、試合を決定づける5点目だけは与えなかった。バックも「久保が頑張ってピンチを切り抜けていた。助けたかった」(副島)と、好守を見せた。強烈な打球を体で止めたり、併殺プレーでしのいだりし、エースをもりたてた。

 逆転劇を呼び込んだのも、久保だった。佐賀大会からの通算安打は1本。だが、4点を追う8回1死無走者で、「絶対につなごう。打てる球は積極的に打っていこう」。左前安打で出塁すると、安打と2四球で生還。副島の逆転満塁本塁打につなげた。

 9回、ストライクをとる度に地鳴りのような大歓声と手拍子がスタンドにこだました。5万人の大観衆。しかし、久保には応援を楽しむ余裕はなかった。ただ、「3年間の集大成を発揮しよう。気持ちだけは負けない」と捕手のミットに集中し、球を放った。試合後も「練習日誌には、今日のうれしさと反省点と両方を書き込みます」。

 参加校数4081校。強豪私学でもなんでもない「普通の公立高校」のエースが、甲子園の優勝投手になった。


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